ロイホが手がけるリッチモンドホテルが顧客満足度1位のワケ…京成電鉄とのホテルが感動的
「電鉄系」と「飲食系」がコラボする理由
一方、リッチモンドホテル(運営会社はアールエヌティーホテルズ)の親会社は、ファミリーレストラン「ロイヤルホスト」などを展開するロイヤルホールディングスだ。
飲食系が運営するホテルとして、地元色豊かな朝食にこだわる。たとえば、山形にあるリッチモンドホテルであれば「山菜そば」、長崎では「皿うどん」を提供するなど、ご当地の食文化が人気だ。新ホテルの朝食も、和洋食のブッフェ方式だが、メニューには、すき焼き、あさりご飯、穴子めし、佃煮など、下町情緒を取り入れた。
そうした特徴や設備、接客姿勢が評価されて、「2018年度 JCSI(日本版顧客満足度指数)調査」(公益財団法人日本生産性本部)では、ビジネスホテル部門での総合評価「顧客満足」で4年連続1位となるなど、リッチモンドホテルの人気は高い。
門前仲町の新ホテルは、こうした特徴を持つ電鉄系企業と飲食系企業がコラボレーションしたものだ。一見、唐突感のあるコラボだが、実は両社の関係は深い。
「アールエヌティーホテルズが運営している『リッチモンドホテル プレミア東京押上』は京成電鉄さんの所有地で、大家と店子の関係の物件もいくつかあります」(ロイヤルホールディングス経営企画部コーポレートコミュニケーション担当部長、吉田弘美氏)
お客を「運ぶ」電鉄系と、「もてなす」飲食系が、共同でホテル事業を運営することで、京成側はビジネスホテルの運営ノウハウを、リッチモンド側は新たな開発インフラを、それぞれ会得するのが狙いだ。
「ホテル事業」を強化する私鉄各社
特に今回のホテル(新ブランド)事業でメリットが大きいのは、すでに国内に40施設あるリッチモンドホテル(ロイヤルHD)よりも、京成側だろう。
少し引いた視点で、京成電鉄の横顔を紹介したい。同社の売上高は約2500億円、営業利益は約300億円で、人気テーマパーク「東京ディズニーリゾート」の運営企業であるオリエンタルランドの筆頭株主として知られる。とはいえ、首都圏在住者には「東京の東部を走る、千葉県と関係の深い電鉄」といった認識で、渋谷を走る東急電鉄や、新宿を走る京王電鉄などに比べて地味な存在だ。
ホテル事業でもこの2社が展開する「東急ホテル」「エクセルホテル東急」や「京王プラザホテル」「京王プレッソイン」に比べると、京成は出遅れ感がある。自社グループで展開する「京成ホテルミラマーレ」など3施設の知名度も、失礼ながら低い。
現在のホテル事業は「総合型ホテル」(シティホテルとほぼ同じ意味)と「宿泊特化型ホテル」(同ビジネスホテル)に分かれる。かつては宴会場もレストランもバーも備え、宿泊できる「総合型」が人気を呼んだが、現在は総じて厳しい。昔は盛んだった、大企業の社長就任パーティーのような大規模な会合も減った。一方でインバウンド数も増大し、20年の東京五輪も見据えた「宿泊型」は、やり方次第で成長が見込まれる。
筆者は企業取材を長年続けてきたが、経営者の宿泊意識も変わった。「3代前までの社長は東京出張時に帝国ホテルが定宿だったが、昨年まで社長だった現会長は、ビジネスホテルを自分で予約することも気にしない」(上場企業の関係者)という話も聞いた。そうなると、華美な「総合型」より、機能性重視の「宿泊特化型」に将来性はある。先に「出遅れ」と記したが、逆に先例企業の取り組みをベンチマークすることもできる。