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三菱電機、危険な企業体質…製品不具合が続出でも非公表、納入先にも連絡せず

文=編集部
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三菱電機のHPより

 昨年12月20日、三菱電機は火災発生時にスプリンクラーや排煙設備などを作動させる非常用発電設備について、停電時に発電できなくなる恐れがあると発表した。部品の取り付けミスが原因で、2001~16年に出荷した1294台の全数で部品を交換する。

 長崎製作所(長崎県時津町)で製造したディーゼルエンジンによる自家発電設備が対象だ。納入先は老人福祉施設や病院、学校、商業施設など多岐にわたる。2004年以降、納入先の定期検査などで発電できない事例があり、原因を調べたところ、50台以上の製品で電子部品の取り付けミスが確認された。個別に修理していたが21年から不具合の報告が増えていた。

 非常用発電設備は不特定多数が利用する規模の大きな施設に消防法や建築基準法で設置が義務づけられている。火災や停電したときなどに、消火ポンプや非常用照明に電気を送る。正常に動くかどうか定期的に点検しなければならない。三菱電機は消防庁に12月10日に不具合を報告し、改修を急ぐよう促されていた。20日まで公表しなかった上に、他の納入先への連絡も行っていなかった。三菱電機は「件数が少ないと判断し、公表していなかったが認識が甘かった」(広報)とコメントしている。

 21年6月、長崎製作所で製造する鉄道車両向け空調装置の検査で、1985年ごろから35年以上にわたって専用のプログラムを使って組織的に不正な検査が行われていたことが発覚した。鉄道車両向け空気圧縮機の検査でも不正があった。

 ほかの生産拠点でも不正が判明した。名古屋製作所可児工場(岐阜県可児市)では安全基準を満たさない電気制御部品を出荷した。三田製作所(兵庫県三田市)はEUの自動車メーカー向けラジオで、EU規格不適合品を納品していた。パワーデバイス製作所(福岡市)でもパワー半導体検査で不備が見つかった。

 一連の不正で杉山武史社長と柵山正樹会長が21年10月までに引責辞任した。情報公開の遅れも指摘され、信頼回復に向けて動き出していた矢先だけに、不具合をめぐる年末の対応が適切だったのかが問われている。

 三菱電機は12月23日、漆間啓社長など新旧役員12人に対する処分を発表した。漆間社長は22年1月から月額報酬の50%を4カ月間減額する。杉山前社長には同50%、6カ月分と退任慰労金の一部の自主返納、柵山前会長にも同50%、6カ月分の返納を要請する。このほか現役の取締役・執行役5人は職務や在任期間などによって10~30%の減給。退任役員についても自主返納を求めた。

 21年12月23日、調査委員会の第2回報告を公表した。鎌倉製作所(神奈川県鎌倉市)の自動料金収受システム(ETC)設備の不正検査など、5製作所で29件の新たな不正が見つかった。不正の累計件数は6製作所47件に膨れ上がった。

 22年1月1日付でグループのリスク管理を統括する社長直轄の「リスクマネジメント統括室」を新設し、リスク管理担当の執行役を新たに置くことを決めた。事業部門を横断する形でリスクに対応する。

「言ったもん負けの文化」

 長崎製作所では1985年頃から品質不正が常態化していた。なぜ、35年以上も放置されていたのか。21年10月1日、社外の弁護士らでつくる調査委員会(委員長・木目田裕弁護士)の調査報告書を公表した。原因の一端をうかがわせる一文がある。

<長崎製作所には、『言ったもん負け』の文化のようなものがある。改善を提案すると、言い出した者が取りまとめになり、業務量の調整もしてもらえないので、単純に仕事が増える。そのため担当者は皆、QC診断の場など公の場では何も言わず、飲み会や雑談の場でだけ職場の問題を話す>

 報告書からは本社部門や管理職に対し、現場従業員が不信感を持つ様子が浮き彫りになった。長崎製作所では「相当数の従業員」が不正を認識していたが、内部通報には至らなかった。

 本音を言えるのは飲み会や雑談の場だけ。ビジネスの場では何も言わず本音を隠す。こうして本来は改善すべき現場の問題が、隠蔽されてしまっていた。報告書は三菱電機のガバナンスについて、「これまでの自社の在り方を肯定することを前提としたものだった」と分析。「事業本部体制はうまくいっている。うちの会社の従業員が嘘をつくはずがなく、ましてや品質不正などもしているはずもない」との肯定感があった、とした。

 各事業本部は独立性が強く「事業本部は異なる別の会社のようである」と述べる経営陣も少なくなかったという。調査報告書は「製作所・工場あって会社なし」と痛烈に指摘した。各事業部の代表が役員になる。他の事業部に口を挟まない代わりに、出身母体の事業部に口を挟ませないという暗黙のルールができあがっていた。

 三菱電機のガバナンス改革は意識の変革から始める必要があるが、長年培われてきた企業文化を変えるのは至難の業である。

(文=編集部)

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