親子上場の解消を目指す
日立製作所の喫緊の課題は「親子上場の解消」である。親子上場は、欧米の企業には見られない日本独得のビジネス慣行だ。そのため、海外の投資家の評価は低くなる。
日立製作所は上場子会社を多数持っていることで知られるが、親子上場批判を受け、完全子会社化や売却によって親子上場の解消を進めてきた。かつて13社あった上場子会社は日立建機、日立ハイテクノロジーズ、日立化成、日立金属の4社となった。
次の親子上場の解消候補として化学メーカー、日立化成の売却報道が駆け巡った。5月にも売却先の選定に入る。日立化成は、かつて「日立御三家」のひとつに位置付けられていたグループの中核企業だ。半導体や2次電池向けの材料などを手掛けている。
18年に品質不正が明らかになった日立化成は19年3月期の連結決算(国際会計基準)は、売上収益は従来予想は7100億円だったが6900億円、純利益は同460億円だったが325億円と、それぞれ下回った。
18年6月に発覚した三重県・名張事業所での産業用鉛蓄電池の検査不正を受け、政府系入札への参加を4カ月控えたことや、北米向けの自動車部品用の粉末冶金製品の出荷が滞ったことが影響した。粉末冶金製品のなかには、1970年代から不正を続けてきたものもある。
国内の7つの事業所すべてで検査不正が発覚した。21年までに最大100億円を投じて、自動検査機を導入する。これまで検査表に数値を手書きで書き込むことが多く、データ捏造の温床となっていた。
日立製作所は、不祥事まみれの日立化成に見切りをつけたようだ。では、どこが日立化成に触手を伸ばすのか。
「米ゼロックスの買収が暗礁に乗り上げている富士フイルムホールディングスが動くのではないか。富士フイルムも日立化成も医薬品の受託製造に力を入れており、相乗効果が見込める」(M&A業界に詳しいアナリスト)
総合化学メーカーは、2000億円台後半に売り値が下がれば手を挙げる。三井化学、三菱ケミカルホールディングス、住友化学が買収に関心を示しているという。しかし、2000億円台後半までは下がらないとみられている。
パナソニックがM&A戦線に加わり、もし日立製作所の名門子会社を買収すれば大きなニュースとなる。