教師自身が一生徒に戻って、学ぶ側の気持ちになってみるという機会はあまりないだろうから、これはアクティブラーニングの手法を体験しながら、教師として何を大事にすべきかを改めて考えさせる研修になったようだ。
参加した先生からは「探究的な学習を通して、教員も生徒も学び合うことの重要性を感じた」「頭・心・手を一体として使うことの重要性を感じた」「自分の教育観や指導法を見直す良い機会になった」という感想が聞かれた。冒頭、ハワード博士の言葉にあったように、先生も一人の人として学ぶことで多くの気づきが生まれていたようだ。
東京都教育委員会が「多様性」をキーワードに、教員向けアクティブラーニング研修を開く狙い
日本でも変化が加速する社会に対応するために、教育が変わろうとしている。「2020年からの教育改革」という言葉は、だいぶ一般の家庭にも浸透してきたように感じるが、果たして教育現場はどう受けとめているのだろう。
そこで、今回の研修を企画した東京都教育庁の森晶子国際教育事業担当課長に狙いを聞いたところ「先生が海外の新しい教授法を学ぶことで、子供たちに『主体的、対話的で深い学び』を提供するためのヒントを得てもらいたいと考えている」という答えが返ってきた。
今、「思考力」「主体性」、そして「多様性」への理解といったワードが、学校教育のキーワードになってきている。また、小学校の英語教科化や、探求型学習、デジタル化など、教育現場に求められることも大きく変わってきている。こうした研修は今後ますます増えていくだろう。しかし、単に手法を学ぶだけで終わってはもったいない。
生徒に主体性や多様性を教えるなら、まず教える側がそうある必要があるし、そのためにも、先生自身が多様な価値観に触れて視野を広げ、学びの価値について考える機会を増やしていってほしいと思う。ハワード博士のメッセージにもあったが、先生も学ぶ人なのだから。
個人的には、教育先進国のニュージーランドの教育をもっと知りたい、現場を視察したいという思いが湧き上がってきた取材だった。
(文=中曽根陽子/教育ジャーナリスト、マザークエスト代表)