LIXILは“オーナーもどき”潮田氏と決別すべき…居住する外国へ本社移転画策の愚かさ
瀬戸氏をCEOに復帰させるのがスジ
瀬戸氏側と会社の指名委員会側と、2つの取締役候補案が提案された状況を受けて、執行役などのLIXIL幹部が指名委員会に「意見書」を2回にわたり提出した。幹部たちが自発的に、自社の重要人事を差配する委員会に意見書を提出するということは相当重大な決意の表れと取ることができる。
4月に提出された1回目の意見書では潮田経営への批判、2回目5月に提出されたものには次のような指摘があったという。
「5月13日の指名委員会・取締役会の発表で、真に中立的な候補者名簿にならなかった理由をお聞きしたい」
「我々は提案された候補者名簿に潮田さんの影響が及んでいる理由を推定しています」
「我々上級執行者は多額の費用を必要とする委任状争奪戦を回避する全ての努力を支持し、瀬戸さんの建設的な提案(Olive branch:和解)を歓迎します」
(以上、5月24日付日経ビジネスオンライン記事『LIXIL幹部らが再び「意見書、委任状争奪戦回避訴え」』大竹剛より)
つまり、幹部たちは瀬戸経営の復活を支持しているのだ。
今回、LIXILの指名委員会で取締役候補の選出を主導し、発表したのは菊地義信取締役だった。同委員会で唯一の社内取締役で、潮田氏と近いと評されている。指名委員会による候補者のなかには、瀬戸氏側の候補者からの選抜がなかった(鈴木輝夫氏と鬼丸かおる氏は会社側候補となることを拒否)ことから、菊地取締役は瀬戸氏側と対立的な構図を現出させた。
潮田氏は4月の会見で、「取締役退任後も相談事があれば」とコメントして、院政への関心があるかのような態度を示してもいる。菊地取締役がその受け皿、あるいはパイプ役を果たすのではないかと危惧する向きもあろう。
LIXILの次期取締役選任に対する私の意見は簡単である。それは瀬戸氏をCEOに復帰させろ、ということだ。単純に瀬戸氏はCEO在職中に大きな失策を犯していない。瀬戸氏の失脚は、潮田氏の気まぐれ、あるいは潮田氏が主導したイタリア建材のペルマスティリーザ社のM&Aでの大きな損失計上の失敗の押し付けによるものだった。
しかも、瀬戸氏解任に当たり指名委員会の委員長だった潮田氏は、瀬戸氏には「委員会の総意だから」と告げ、取締役会では「瀬戸氏から辞任の申し出があった」と、両者を愚弄するような対応をしたとされている。ここで両者を愚弄した、というのは株主をも愚弄したというに等しい。
となれば、この実績のあるプロ経営者が希望しているのだから復活の出番を与えるのがガバナンスの王道というものだろう。
瀬戸氏自身はLIXILの経営風土として「深く根付いた忖度文化が立ちはだかっていると感じたのは一度や二度ではありません」(「文藝春秋」<文藝春秋/2019年6月号>記事『私は創業家に屈しない』より)と、指摘している。
LIXILは、このたびの取締役選任争いを奇貨として瀬戸氏が指摘しているような忖度人事から決別すべきである。潮田氏は社外に出て、ただの一般株主のステータスになるはずだ。つまり在野の存在となる。この際、トップ人事という大事を透明性のある議論で決定する方向に舵をきるべきだ。
幸い、指名委員会が提出した8名の候補のなかには、社内の候補は1人しかいない。瀬戸氏側と合わせて16名全員を新取締役として選任し、瀬戸氏がCEO代表取締役に選任され復帰するのが、成り行きからみてLIXILの大義だと私は思う。
さらにこの機会に、形骸化していた同社の指名委員会を実質機能させ、社外のオーナーもどきの人たちの影響や関与(クビキ、呪縛といったほうがいいのか)から、同社のステークホルダーの皆さんが完全に解放されることが望まれる。
(文=山田修/ビジネス評論家、経営コンサルタント)
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