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東芝に外資系ファンドがTOBの動き…非上場化も現実味、再建策が空中分解

文=Business Journal編集部
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東芝の事業所(「Wikipedia」より)

 東芝の再建策が振り出しに戻った。臨時株主総会で、2021年11月に打ち出したグループ全体を2分割する案は株主の支持を得られなかった。東芝は3月28日、臨時報告書を開示し、3月24日の臨時総会の賛否の比率を明らかにした。会社提案の2分割案は、賛成が39.53%、反対が59.69%で否決された(残りは棄権)。

 第2位の株主でシンガポールを拠点とする資産運用会社3Dインベストメント・パートナーズが株式の非公開化の検討を含めて戦略の見直しを求めた案は、賛成が44.60%、反対が54.84%で否決された。株主提案への賛成比率が会社提案のそれを上回った。筆頭株主でシンガポールの旧村上ファンド系投資ファンド、エフィッシモ・キャピタル・マネージメントなどが3Dの案を支持した。投資家の判断に影響力を持つ米議決権行使助言大手インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)とグラスルイスが2分割計画に反対を推奨していた。

 東芝の発行済株式の2割超を「物言う株主」が握り、過半数が海外の投資家が持っている。2分割案への反対は3割を持つ国内の機関投資家にも広がったと見られる。

 東京都新宿区のベルサール高田馬場で開かれた臨時株主総会には189人が出席した。元東芝社員という株主ら14人が事業売却や経営方針などについて次々と質問。取締役会議長として登壇した綱川智前社長が「変革をわれわれの手で進めたい」と会社提案への理解・支持を訴えたが叶わなかった。

計画の修正、社長の電撃交代で株主は不信を募らせていった

 会社提案が否決された背景には、場当たり的な対応に終始した経営陣に対する株主の不信感がある。21年3月の臨時総会、同6月の定時株主総会に続き、会社側は3連敗となった。

 計画は当初、3分割だった。半導体などを手がけるデバイスと原発などのインフラサービスをそれぞれ東芝から切り離して上場させ、東芝は半導体メモリー事業が独立したキオクシアホールディングスなどの株式を保有する会社になるという案だった。21年11月、3分割計画を発表。綱川社長(当時)は、「株主のためにも最善の道だ」と胸を張った。ところが、投資ファンドなどは「成長性が見えない」と反発した。

 22年2月7日、デバイス事業を分離してインフラ事業を本体に残す2分割案への修正に追い込まれた。今後2年間に3000億円を株主に還元するとし、3月24日の臨時総会で賛否を問う構えを崩さなかった。2分割にも株主の反対が根強くあって、混乱が続いていた。

 臨時総会直前の3月1日、経営トップが突然、交代した。分割案を推進してきた綱川智社長兼最高経営責任者(CEO)と、計画策定を担ってきた畠澤守副社長がそろって退任。デジタル事業トップの島田太郎執行役上席常務が社長に就任した。指名委員会のレイモンド・ゼイジ委員長は同日の記者会見で「株主から、かなり長い期間にわたり、リーダーの交代を求める声があった」と明かし、「臨時総会の前に最新の経営陣を示すことで、株主に議決権行使について考えてもらうためにも、正しいタイミングの交代だ」と述べた。綱川氏は「引責辞任ではない」と主張したが、経営陣を刷新することで新味を出そうとしたことに変わりはない。

 島田社長は、ドイツのシーメンスの日本法人の専務を務めていた技術者。車谷暢昭氏が東芝社長として乗り込んだ際に、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するために連れてきた人物だ。あくまで島田社長は暫定であり、6月の定時株主総会までに外部人材を含めて最適なトップが見つかれば、再び社長交代があるということだ。

 臨時株主総会で会社提案が否決されたため、早急に戦略の立て直しを迫られる事態となった。経営計画の見直しにとどまらず、現経営陣が距離を置いてきた非上場計画が一気に浮上し、現実味を帯びてきた。

筆頭株主のエフィッシモはベインがTOBなら応募する

 ロイターは3月31日、米ベインキャピタルが東芝株を株式公開買い付け(TOB)した場合、エフィッシモは保有株をすべて売却する方針だと報じた。エフィッシモが31日、関東財務局へ提出した変更報告書で明らかになった。エフィッシモは東芝株の9.90%を保有。変更報告書によると、ベインや関連する投資ファンドが東芝株へのTOBを開始した場合、全保有株の売却に応じる契約を結んだ。ベイン以外の第三者のTOBには応じない。ベインはキオクシアホールディングスの筆頭株主である。3月31日、ベインはHPに「非上場化の実現に向けて解決すべき課題が多く、東芝経営陣とも対話を進める」とのコメントを出した。

 東芝の非公開化をめぐっては、21年4月、英投資ファンドCVCから買収提案があった際にも浮上した。車谷社長がCVC日本法人の会長を務めていた経緯があることから、この買収提案には「不透明」との批判が噴出し、車谷氏は社長辞任に追い込まれた。

 ベインによる東芝の株式非公開化計画の歯車が回り始めた。

(文=Business Journal編集部)

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