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鈴木貴博「経済を読む“目玉”」第13回

『半沢直樹』ヒットの秘密は“ありえない”フィクション? グレー=アウトな銀行の内情

文=鈴木貴博/百年コンサルティング代表取締役
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 ちなみに私がこれまでもらったものは、木製の軸にロゴの入った書きやすい高級ボールペンと、ヨーロッパの有名ブランド製のマグカップだった。ティッシュボックスというのはプライベートバンクの贈答品としてはありえないのである。

 もうひとつの隠し財産の証拠が、東田社長の内通者が隠し持っていた米国系銀行の預金通帳だったが、米国のメジャーな銀行では通帳は使わない。日本でも外資系銀行から発行されるのはたいがいはA4サイズの取引レポートだ。念のための豆知識ではあるが。

【半沢直樹のフィクション3】グレーになった段階でアウト

「クソ上司め、覚えてやがれ!」というキャッチフレーズそのままに、半沢直樹のドラマの中では、半沢の上司が何らかの不正に関わっていて、半沢の邪魔をする。ドラマの中盤で上司の不正の証拠が見つかるのだが、毎回、「これではまだ証拠が足りない。確実な証拠がない」といって半沢のチームが悔しがるシーンがある。実際は不完全でもここまで灰色の証拠があれば、その証拠を人事部に伝えた段階で、行員である上司はアウトである。

<事例1>
 破たんした西大阪スチールの東田社長の愛人から5000万円の謝礼を振り込まれた証拠を、半沢につかまれた銀行の上司。別にそれが東田社長の指示だと証明されなくても、この段階でアウト。

<事例2>
 行内検査で意図的に書類を抜き取って半沢を追い詰めた検査役が、自分のカバンの中から紛失した書類を見つけられたシーン。他の検査チームメンバー4人が横で見ていた以上、この段階でアウト。

<事例3>
 銀行の取引先から妻の会社に3000万円の迂回融資をしていたことが発覚した役員。「私の知らなかったところでたまたま妻とその知人が信頼関係の中でやったことだ」と申し開きしていたが、グレーな取引が発覚した段階でアウトというのが銀行のルールだ。

 銀行はクリーンである必要があるため、グレーなものはクロとして処分するのが通例だ。もっとも常務クラスを解任するとなると、それこそ金融庁への報告が必要になるため、リアリティとしては密室でつるし上げて本人の意思で退任させ、健康上の理由で銀行からいなくなるかたちになるものだ。

 と、ここまで書いて私も大きな見落としをしているのに気がついた。人事部が機能していない場合、つまりドラマで描かれたように取締役人事部長が悪い上司なら、三番目に指摘した「ありえない話」は、すべてありえてしまうではないか。

 そう考えると『半沢直樹』、意外と細部までリアリティのある話だったのかもしれない。
(文=鈴木貴博/百年コンサルティング代表取締役)

鈴木貴博/百年コンサルティング代表取締役

鈴木貴博/百年コンサルティング代表取締役

事業戦略コンサルタント。百年コンサルティング代表取締役。1986年、ボストンコンサルティンググループ入社。持ち前の分析力と洞察力を武器に、企業間の複雑な競争原理を解明する専門家として13年にわたり活躍。伝説のコンサルタントと呼ばれる。ネットイヤーグループ(東証マザーズ上場)の起業に参画後、03年に独立し、百年コンサルティングを創業。以来、最も創造的でかつ「がつん!」とインパクトのある事業戦略作りができるアドバイザーとして大企業からの注文が途絶えたことがない。主な著書に『日本経済復活の書』『日本経済予言の書』(PHP研究所)、『戦略思考トレーニング』シリーズ(日本経済新聞出版社)、『仕事消滅』(講談社)などがある。
百年コンサルティング 代表 鈴木貴博公式ページ

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