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ソニーの憂鬱〜大手電機で“一人負け”の理由とは?主力エレキ、10年連続赤字も濃厚に

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ソニーの憂鬱〜大手電機で“一人負け”の理由とは?主力エレキ、10年連続赤字も濃厚にの画像1ソニー本社(「Wikipedia」より/Shuichi Aizawa)
 11月1日の東京株式市場では、パナソニックソニーが明暗を分けた。パナソニックの株価は一気に年初来高値の1053円をつけ、終値は1046円。前日比61円高で6%上昇し、1000円台回復は2011年7月以来2年4カ月ぶりのことだ。

 一方、ソニーは売り気配から始まり、一時前日比237円(13%)安の1640円と急落。209円(11%)安の1668円で終わった。5月22日に年初来高値の2413円をつけており、高値から30%以上も下げたことになる。

 前日(10月31日)に発表した14年3月期決算の見通しでパナソニックは最終利益を期初予想の500億円から2倍の1000億円へと上方修正。対してソニーは最終利益を従来予想より200億円少ない300億円へと下方修正した。営業利益は2300億円から1700億円に600億円も目減りして、当初予想の前年比横ばいから同26%の減益となる。パナソニックは業績回復が好感されて買われ、ソニーは投資家の失望を招き売られた。

 ソニーは年央に時価総額でパナソニックを逆転していたが、夏以降はパナソニックが再逆転。11月1日の時価総額はパナソニックが2.5兆円、ソニーが1.7兆円と8000億円の差がついた。ちなみに、10月に発表された日立製作所の14年3月期決算の予想営業利益は5000億円と過去最高益に迫り、東芝も同期営業利益見通しを前期比50%増の2900億円へ引き上げ、過去最高の達成も視野に入ってきた。こうした大手電機各社の健闘が目立つ中でソニーの“一人負け”が鮮明になってきた。

●苦戦抜け出せないエレキ事業

 ソニーは10月31日、14年3月期の連結当期利益(米国会計基準)を前年同期比30%減の300億円に下方修正した。同16%増の500億円としていた8月時点の予想から一転、減益となる。本業の儲けを示す営業利益の予想は、同26%減の1700億円(従来予想は2300億円)。売上高は同13.2%増の7兆7000億円(同7兆9000億円)に2000億円引き下げた。テレビやパソコン、デジタルカメラなどエレクトロニクス製品が振るわなかった。

 本業のエレクトロニクス(電機)事業は、中間決算で前年同期の177億円の営業赤字から108億円の黒字に転換した。当初の想定より円安に振れたため、海外での売り上げが増え、リストラの効果もあって黒字を確保した。また、第2四半期(7~9月)は円安が進んだことで、為替が195億円の営業利益増益要因になったにもかかわらず、最終利益は158億円の赤字となった。

 エレクトロニクス4製品(テレビ、パソコン、デジタルカメラ、ビデオカメラ)の販売低迷が全体の足を引っ張る構図は変わらない。スマートフォン(スマホ)のカメラ機能向上やタブレット端末の普及により、デジタルカメラやパソコンの市場が侵食された。

 加藤優・最高財務責任者(CFO)は決算会見で、エレクトロニクス事業の市場環境が想定以上に悪化していることについて「たいへん厳しい」と述べた。期初には同事業は今期1000億円程度の黒字を目指していたが、黒字の幅は数百億円に縮小する。14年3月期(通期)のエレクトロニクス製品の個別の販売目標を、8月発表時点よりさらに下方修正した。テレビの販売計画は従来予想の1500万台から1400万台(前期実績は1350万台)に引き下げた。中南米やアジアなどの景気減速を考慮し、新興国の需要見通しを下げた。前期実績を下回る懸念もある。

 テレビの販売計画は8月に1600万台から1500万台に下方修正したばかりだ。テレビ事業の7~9月期は93億円の赤字で、4~6月期の52億円の黒字から大きく悪化した。デジタルカメラは1200万台(従来予想1250万台)、ビデオカメラは230万台(同250万台)、パソコンは580万台(同620万台)に、それぞれ販売計画を引き下げた。スマホについては4200万台の目標を据え置いた。

 エレクトロニクス事業を14年3月期に黒字にすると公約していた平井一夫社長兼最高経営責任者(CEO)は面目を失った格好となった。「プレイステーション4」などに期待し、「数百億円の黒字は達成できる」(加藤氏)としているが、9年連続で赤字のテレビ事業は「黒字化が難しくなった」(同)と述べ、10年連続で赤字になる。平井社長がコミットメント(必達目標)を達成できなくなる可能性が出てきた。

 これを受けて米格付会社のムーディーズ・インベスターズ・サービスは、ソニーの長期信用格付けを引き下げる方向で見直すと、11月1日に発表した。現在は「Baa3」だが、1段階下がると投機的な水準になる。ムーディーズは昨年11月にソニーの格付けを1つ下げて「Baa3」にした。「主な分野で収益の改善が進んでおらず、リストラなどの対応が想定以上に長引くことが見込まれる」と指摘している。

●エンタメ事業も市場の期待に応えられず

 主力のエレクトロニクスの不振は、ある程度の「想定内」とみられていたが、初めて詳細を発表したエンタテインメント事業も市場の期待には届かず、これが投資家の売りを加速させた。ソニー株はリストラを評価されて一定の水準を保ってきたが、現実の業績の厳しさがリストラの効果を打ち消してしまった。「エレキ部門の低迷を補う事業を持たないことが、ソニー最大の問題点」(業界関係者)と指摘する声も聞こえる。

 そんな厳しい状況が続くソニーに対し米投資会社サード・ポイントは、ソニーのエレクトロニクス事業がエンタテインメント事業の価値を損なっていると主張し、エンタメ事業の分離上場を提案している。ソニーは8月、この分離上場提案を拒否したばかりだ。

 10月31日、ソニーはサード・ポイントの要請を受けるかたちで、エンタメ事業の映画や音楽のなど分野別売上や作品別興行収入の数字を初めて開示した。それによると、13年4~9月期の映画事業の売上高は3365億円。内訳は映画制作が1687億円、テレビ番組制作が853億円、テレビ局などメディアネットワークが824億円だった。音楽事業は2219億円で、制作が1587億円、楽曲のライセンスなど出版が308億円、アニメーション作品の制作など映像メディア・プラットフォームは323億円だった。

BusinessJournal編集部

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