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膨張するLIXIL〜積極果敢な海外企業買収で高まる財務リスク、効果に疑問の声も

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 だが、現状ではグローエに対するLIXILの出資比率は40%程度にとどまり、持ち分法適用会社にしかならない。海外売上高1兆円を中期目標にしているLIXILは、グローエを連結子会社にしなければ目標達成にはほとんど意味がない。

 これについて、藤森社長は「時間を稼ぐためだ。グローエが売りに出ている今を逃せない。このスキームでひとまず部分的に買収し、財務力がついた3〜5年後に政投銀の持ち分を買い取り、子会社化する」とのシナリオを示している。

●財務体質に市場から懸念の声も

 ところが、市場では「LIXILの財務体質は相次ぐ海外の大型買収で脆弱化しており、グローエ買収が脆弱化に拍車をかける結果になるのは明らか」(格付会社関係者)との声が少なくない。例えば、10年3月末の同社の自己資本比率は約50%だったが、ペルマスティリーザの買収などで借入金が膨らみ、12年3月末には35.7%まで低下。直近の13年6月末は38.1%まで低下し、「グローエの買収完了時点では、35%程度まで低下することが予想される」(証券アナリスト)といわれている。それを意識してか、藤森社長は「グローエで海外の大型買収はいったん休止する」と宣言したものの、「国内の買収は今後も進める」と貪欲なところを見せている。

 LIXILは相次ぐ買収で事業規模を拡大してきた。規模のメリットで資材調達や生産の合理化を図る一方、価格競争力を武器に競合を駆逐するためだ。

 サンウエーブ工業、新日軽などの強敵を買収によって経営統合してからは、海外同業の買収を本格化。そして藤森氏を11年8月にLIXIL社長に招聘してからは、海外大型買収を一気呵成に進めてきた。

 09年3月期に1兆円強だった同社の売上高は、13年3月期に1兆4364億円と40%強も伸びている。だが、この伸び分は、11年末までに買収した内外企業の売上高総計(買収時点、4124億円)が上乗せされただけにしか見えない。藤森社長の経営手腕が高く評価され、インタビューや講演の依頼が絶えない一方、市場関係者の間では「海外買収については今後どういうシナリオで足し算以上の効果を生み出すのか、具体的には何も見えない」と不安を示す声が少なくない。

 さらにグローエ買収に至っては「今後の業績次第ではキャッシュフローが銀行の監視下に置かれ、投資などを制約される可能性がある。安定的に収益を上げられなくなった場合、銀行に経営主導権が移るリスクもゼロではない」(証券アナリスト)との見方すら出ている。

 こうした市場の不安を払拭するため、一刻も早く矢継ぎ早に行った海外買収の成果を表すことが求められているようだ。
(文=福井晋/フリーライター)

BusinessJournal編集部

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