特定秘密保護法反対デモはテロ?騒音?石破茂氏発言騒動から透ける、同法の本質的危うさ
12月6日、特定秘密保護法が成立したが、自民党の石破茂幹事長が11月29日、同法に抗議する国会周辺でのデモ活動について、自身のブログに「単なる絶叫戦術はテロ行為とその本質においてあまり変わらないように思われます」と書き込んだことが議論を呼んでいる。
「左右どのような主張であっても、ただひたすら己の主張を絶叫し、多くの人々の静穏を妨げるような行為は決して世論の共感を呼ぶことはないでしょう」「主義主張を実現したければ、民主主義に従って理解者を一人でも増やし、支持の輪を広げるべきなのであって」との“但し書き”付きではあるが、デモをテロと同一視したようにもとらえられる内容に批判が集中。各メディアが、この書き込みについての抗議の声を伝えている。
12月1日のNHKニュースは、抗議活動に参加した女子高生による「私たちは選挙権もないので声を上げることしか方法がない。抗議活動がテロ行為だとされたことはまったく信じられない」というコメントや、横須賀市の19歳の男性が「抗議活動をテロとみなしたことは、政治家が国民の声を聞こうとしない表れだと思う」と批判する声などを紹介した。
また11月30日付朝日新聞にコメントを寄せた五野井郁夫・高千穂大准教授(国際政治学)は「人々が声をあげるのは、法案を承服していないから。(デモを)石破氏は『絶叫戦術』と言うが、やむにやまれず声を出しているのであり、テロ行為と変わらないというのは民主主義を愚弄(ぐろう)している」「民主主義とは異なる意見をいかにして取り入れていくかということ。議会の外にも民主主義はあり、議員会館にいて静穏を妨げるも何もない」と指摘している。
また思想家の内田樹氏は12月1日、自身のブログで、特定秘密保護法が規定する「特定有害行為」にある「テロリズム(政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要し、又は社会に不安若しくは恐怖を与える目的で人を殺傷し、又は重要な施設その他の物を破壊するための活動をいう)」との文言を引き、石破氏の書き込みを厳しく批判した。
内田氏は、「幹事長の解釈に従えば、すべての反政府的な言論活動や街頭行動は『政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要』しようとするものである以上、『テロリズム』と『その本質においてあまり変わらないもの』とされる」と指摘。自身は「強要」ではなく「説得」のつもりで書いていても、それを判断するのは「国家若しくは他人」であり、「このように法案文言に滑り込まされた『普通名詞』の定義のうちにこそこの法案の本質が露呈している」と締めくくった。
●一部では肯定的意見も
石破氏といえば、そのキャラクターでネットユーザーに人気が高い政治家のひとりとして知られている。インターネット掲示板・2ちゃんねるでは、
「騒音という暴力で政治家に心理的圧力をかけて政治的目的を達成しようとする行為を『テロと変わらぬ』と言って、何がおかしいんだろうか?」
「ここ日本においてデモとは有権者の投票先を変えさせるためのアピールなのに、騒音で有権者に嫌われては本末転倒、結果的にテロと同じ行為だと言いたいんだろう」
など、石破氏の発言に理解を示すコメントも見られる。
しかし、同案について、まさに「政府による恣意的な運用」に対する危惧が叫ばれているなかでの騒動ということもあり、肯定派はごく少数だ。
石破氏は12月1日、富山県南砺市で講演し、「『テロだ』と言ったわけではないが、テロと同じだというふうに受け取られる部分があったとすれば、そこは撤回する」「もし表現が足りなかったところがあれば、お詫びしなければならない」と語っているが、今回の“失言”はまだ波紋を広げそうだ。
(文=blueprint)