中国に収益を大きく依存する上場企業の決算が悪化している。売上高に占める中国の割合が大きい企業のうち、今週までに2023年7~9月期決算を発表した6社の売上高(一部は受注高)は、すべてマイナスとなった。この中にはこの一年は増収基調だったものもあり、全社の減収で中国景気の減速が改めて鮮明になった形だ。
集計対象としたのは、売上高に占める中国の比率が例年2割を超すニデック(旧日本電産)、ファナック、日本精工、TDK、村田製作所、日東電工の6社。このうち、TDKと村田製は中国シェアが半数超を占める。また村田製は台湾などを含む中華圏で、ファナックは足元の業況が分かる受注高とした。
ニデック(旧日本電産)の7~9月期売上高は10%減の1463億円に落ち込んだ。中国製電気自動車(EV)向けモーターに社運を賭けてきたが、価格競争の波にもまれた。永守重信会長は、「大事なのは収益の改善だ」と述べ、モーターの販路を日米欧に広げる考えを示した。
工作機械メーカーも不振だ。ファナックは今春から受注の減少に拍車が掛かり、4~6月期は42%減と急落。今回発表した7~9月期も35%減の349億円と減少が止まらない。山口賢治社長は、「中国では設備投資の抑制が続いており、回復速度は鈍い」と話す。なお、同期の売上高は27%減の418億円だった。
同じく工作機械を手掛ける日本精工も、7~9月期売上高は18%の急減となった。経営陣は「中国向けの停滞は下半期も続く」とぼやく。
スマートフォン関連も厳しい。中国での収益に長年頼っているTDKと村田製の減収率は、それぞれ14%、11%に達した。ディスプレー部品に強い日東電工も12%のマイナス。TDKは中国をはじめとした世界のスマホ需要減少が直撃。連結ベースの上半期純利益も4割減と、中国の不振が大きく響いた。日東電工も、「スマホだけでなく家電やパソコンも悪かった」(広報担当者)という。
こうした中、村田製の村田恒夫会長は、「中国の経済指標は確かに悪い。しかしスマホがそれほど落ち込んでいるわけでない」と、減速説に反論する。高級機から汎用(はんよう)機へのシフトが確かに進んだが、台数ベースでは堅調だと主張し、「中国スマホ業界は目下回復中」と強気だ。実際、村田製の中国での売上高は1~3月期に底を打ち、マイナス圏からの浮上をうかがうところまでこぎつけた。
中国に収益大きく頼る本邦製造業企業の決算発表は、来週以降も東京エレクトロン、東レ、ニコン、資生堂、ピジョンなどが続く。(了)
(記事提供元=時事通信社)
(2023/11/02-14:34)