中部電力の林欣吾社長は2日までにインタビューに応じ、2024年の抱負について「新しい価値や世の中に対してのサービスを具体的に示していく年になる」と述べた。また、同社独自の電気料金の負担軽減策も検討する考えを示した。主なやりとりは以下の通り。
―23年を振り返り、どんな1年だったか。
世界や日本でエネルギー事情を取り巻く環境が非常に混迷を極め、大きく変化した。先に向かってのリスクへの対応など学ぶことが多かった。
―子育て世帯や高齢者世帯などを対象に、24年1~2月請求分で独自の負担軽減策を実施しているが今後は。
継続的に負担軽減策を行っている。今後も好決算が見込めることを前提に、何かできないか検討を始めている。この冬以降のエネルギー情勢などをもう少し見極めてから、何ができるのか示していく。
―顧客から選ばれるためにどういう料金やサービスを打ち出していきたいか。
安定的に安価な料金でお届けするというのは大事な戦略だとは思うが、料金だけでなく見守りサービスなど暮らしに役立つサービスを一緒に提供できるようにすれば、満足いただけるのではないか。
―浜岡原子力発電所の3~5号機の燃料プールには9割近くの使用済燃料がある。再処理工場に搬出するまでの間、一時的な貯蔵施設となる乾式貯蔵施設の設置はいまだ審査中だが、対策や見通しは。
審査に真摯(しんし)に対応する。適合性確認と認可を早期にいただきたい。燃料プールの中は87%ぐらい。他に乾式貯蔵施設が建てられず、青森県六ケ所村の再処理工場も動かないというのであれば2年ぐらいで満杯になる。六ケ所村の竣工と乾式貯蔵施設の建設が大事だ。
―50年までにグループとして二酸化炭素(CO2)排出量ゼロを目指しているが、方策は。
あらゆる戦術や政策を実現していかないと達成できない。原子力発電所の再稼働、再生可能エネルギーの最大限の活用、(東京電力グループと中部電力が出資する発電会社の)JERAが持つ火力発電の脱炭素化が必要だ。安定供給という面からバックアップする火力発電が必要になるかと思うがCO2を(大量に)出す火力発電では今後需要がない。火力発電自体の脱炭素化も必要だ。
―9月に出資を発表した米ニュースケール・パワーが次世代の原発となる小型モジュール原子炉(SMR)の初号機計画を中止した影響は。
ニュースケールは規制当局から設計認証を取得した企業であり、米国では審査が一番早く進んでいる。そういう意味で商業運転に向けて実現可能性は高い。東欧や米ペンシルベニア州でも建設計画があり、着実にやっていけば実現可能なもので、投資に向けて準備をしている。(了)
(記事提供元=時事通信社)
(2023/12/30-16:03)