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モンスターエナジーがポケモンもモンストも片っ端から商標登録の異議申し立て

文=Business Journal編集部、協力=山岸純弁護士/山岸純法律事務所代表
モンスターエナジーがポケモンもモンストも片っ端から商標登録の異議申し立ての画像1
モンスターエナジー(「amazon.co.jp」より)

 エナジードリンク「モンスターエナジー」の権利元であるモンスターエナジーカンパニー(以下、モンスターエナジー社)が、アニメ「ポケットモンスター」(任天堂)やゲームタイトル「モンスターストライク」(ミクシィ)、アイスバー「カロリーモンスター」(森永乳業)、エイベックスのレーベル「Far East Monster Records」など、「モンスター」や「M」を含む名称の商標登録に片っ端から異議を申し立てていることが一部で話題を呼んでいる。独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)が提供する特許情報プラットフォーム「J-PlatPat」で調べたところ、これまでに計140件も異議申し立てを行い(2月6日時点)、すべて特許庁による審決結論で商標登録の「維持」との判断が下され、モンスターエナジー社の申し立ては認められていない。なぜ同社はこのような行動を繰り返しているのか。専門家の見解を交え追ってみたい。

 2002年にアメリカで発売されたモンスターエナジー。日本では独占販売権を持つアサヒ飲料が12年から販売。日本上陸当時は「レッドブル・エナジードリンク」が国内でトップシェアを持っていたが、モンスターエナジーがその座を奪い、現在エナジードリンク市場で断トツの1位となっている。モンスターエナジーが国内で躍進した理由について、情報サイト「エナジードリンクマニア」管理人のエナジー・ドリン君氏は22年5月7日付当サイト記事で次のように解説していた。

「12年当時の日本での販売サイズをご説明します。日本ではレッドブルが185mlで190円(税別)なのに対して、モンスターエナジーは355mlで190円(税別)でした。倍に近い量が入っているにもかかわらず値段が安いわけですから、若者を中心に人気があるエナジードリンクなら購買欲が掻き立てられるのは当然といえるでしょう。20年前アメリカでモンスターエナジーが登場したときと同じ状況が日本でも起きていたわけです。

 さらにファンを増やした秘訣が、フレーバーの種類の豊富さと美味しさでしょう。モンスターエナジーは22年3月末までに14種類(販売終了・自販機限定含む)ものフレーバーを発売しています。上陸から10年間、コンスタントに新作を発売し、そのなかでもパイプラインパンチは売れすぎて製造が追いつかなくなるほど人気商品となりました。この10年で大容量のコスパの良さと豊富なフレーバー展開により、圧倒的なブランド力を日本でも築き上げたと考えています」

アトラクションや会社名、ゴルフボールも

 そんなモンスターエナジーだが、前述のとおりその権利元が他社の「モンスター」という言葉が名称に使われている数多くの商標の登録に異議を申し立てている。たとえば、「モンスターストライク」への異議申し立てでは次のように主張している。

<本件商標は、一般に、出所識別標識として強い印象を与える語頭部分に申立人の使用に係る「MONSTER」の音訳「モンスター」を包含するものであって、申立人の使用に係る「MONSTER ENERGY」「MONSTER KHAOS」「MONSTER ABSOLUTELY ZERO」等の「MONSTER」ファミリー商標と同一の構成(すなわち、「MONSTER」と他の文字等を結合してなる構成)の商標として把握される>

<本件商標が本件指定商品等に使用された場合,これに接した取引者,需要者は,申立人の使用に係る「MONSTER」及び申立人会社を直観し,当該商品等が申立人又は申立人と経済的又は組織的関係を有する者の取り扱いに係るものであると誤信し,その出所について混同を生じるおそれがあることが明らかである>

<本件商標が使用された場合,申立人の商品及び役務の出所識別標識として広く認識されている「MONSTER」の出所表示力が希釈化するおそれが高い。また,本件商標の使用は,申立人が当該商標について獲得した信用力,顧客吸引力にフリーライドするものであるから,申立人に経済的及び精神的損害を与える。したがって,本件商標は,社会一般道徳及び公正な取引秩序の維持を旨とする商標法の精神及び国際信義に反するため,公の秩序を害するおそれがある>

 また、食品メーカー・株式会社ミツハシの加工食品の名称に使用されている「M」の文字について、モンスターエナジー社は、モンスターエナジーのロゴの爪の図柄の「出所識別力を希釈化するおそれがある」として、同じく商標登録に異議を申し立てている。

 エイベックスのレーベル「Far East Monster Records」については以下のように主張している。

<本件商標と引用商標4は「MONSTER」の文字を包含する点で外観が類似し、また、「モンスター」の称呼及び観念を共通にするから、商品出所識別標識として紛らわしい印象を取引者、需要者に与える類似のものである>

<本件商標の使用は、申立人の商品及び役務の出所識別標識として広く認識されている申立人商標の出所識別力を希釈化するものであり、また、その名声、顧客吸引力にフリーライドするものといわざるを得ない>

 このほか、異議申し立ての対象となっている商標は、パラマウントピクチユアーズの映画『モンスタートラック』や徳間書店の漫画『モンスター娘のいる日常』、日東薬品工業が設立したグループ企業・Noster株式会社、本間ゴルフのゴルフボール「SPEEDMONSTER」、富士急行のアトラクション「マッスルモンスター」など多岐にわたる。

商標権とは「機能」の意味合いが強い

 こうした一連の申し立てはいずれも特許庁から認められていないが、それでもモンスターエナジー社が申し立てを行い続ける理由はなんなのか。山岸純法律事務所代表の山岸純弁護士はいう。

「そもそも登録された『商標』に認められる『商標権』とは、商標を使用できる『権利』といった意味合いよりは、その商標が付けられた商品やサービスがどこのメーカーが製造したものであるかを明らかにする『機能』の意味合いが強いと考えられています。

 アニメ『ポケットモンスター』や、ゲーム『モンスターストライク』など『モンスター』が名づけられた商品やサービスが『モンスターエナジーカンパニー』によって提供されているなんて、誰も思わないですよね。したがって、認められようがない(『ポケットモンスター』など、登録された商標が無効となるようなことはない)と考えられます。

 では、なぜこんなことをやっているのか。モンスターエナジーカンパニーが、これから新しい商品やサービスを提供するにあたり『モンスターなんとか』といった商標を付けるのでしょうが、その際、いわゆる“ファミリーネーム”、すなわち『個別商品の大概念』、つまり例えばトヨタ車でいうところの『カローラ』『クラウン』といったような商標として認められやすくするため、手あたり次第に他社が『モンスター』を使用することを排除しようとしているのではないでしょうか」

(文=Business Journal編集部、協力=山岸純弁護士/山岸純法律事務所代表)

山岸純/山岸純法律事務所・弁護士

山岸純/山岸純法律事務所・弁護士

時事ネタや芸能ニュースを、法律という観点からわかりやすく解説することを目指し、日々研鑽を重ね、各種メディアで活躍している。芸能などのニュースに関して、テレビやラジオなど各種メディアに多数出演。また、企業向け労務問題、民泊ビジネス、PTA関連問題など、注目度の高いセミナーにて講師を務める。労務関連の書籍では、寄せられる質問に対する回答・解説を定期的に行っている。現在、神谷町にオフィスを構え、企業法務、交通事故問題、離婚、相続、刑事弁護など幅広い分野を扱い、特に訴訟等の紛争業務にて培った経験をさまざまな方面で活かしている。
山岸純法律事務所

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