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近ツーに修学旅行バス・ドタキャン騒動の顛末を聞いた「他にも1件ある」

文=Business Journal編集部
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「Getty Images」より

 東京・町田の中学校が、修学旅行を翌週に控えた時期に、旅行会社大手の近畿日本ツーリストから運行予定だった貸切バスの運行を断られるという事態が発生。SNS上では、「近ツーほどの大手でもバスドライバーの確保に苦労しているのか」と驚きの声があがっている。近ツーでは、ほかにも同様の事態が1件発生したという。バス業界では、ドライバーを確保することが極めて困難な状況に陥っているようだ。

  20244月から、自動車運転業務の年間時間外労働時間の上限が960時間に制限され、物流業界でドライバー不足が深刻になっている。ドライバーの労働環境は、長時間労働の慢性化という課題がつきまとってきた。そんななかで、ドライバーの労働環境改善を目的として、年間時間外労働時間の上限が設定されたわけだが、若手不足や高齢化が進む物流業界では、ドライバーの時間外労働によって支えられてきたのが実態で、その時間外労働を制限されれば、当然ながら人手不足が顕著になる。

  働き方改革関連法が成立した時点で、ドライバー不足がさまざまな問題を招くことは想定されており、“物流の2024年問題”と呼ばれ、危惧されてきた。ドライバー不足をなんとか補おうと、ドローンやロボットによる宅配や、AI(人工知能)を活用した業務の効率化などが模索され続けている。

  それでも、ドライバーの不足は埋められていない。それどころか、EC市場の急成長による宅配便の取り扱い個数の増加により、物流にかかわる人手不足は、ますます拍車がかかっている。また、ドライバー不足は宅配業者だけの問題ではない。バスの運転手も足りなくなっている。

  4月にはドライバー不足から、横浜市営バスが二度にわたって計367本の減便を余儀なくされるなど、社会生活にも大きな影響が出ている。横浜市交通局では、給与アップや手当の拡充などの待遇改善のほか、初めて女性ドライバーを募集するなど、運転手の確保に努めているが、それでも成り手は少ない。

  さらに、ドライバー不足は子どもの学校生活にも影を落とし始めた。東京・町田市の中学校で、3年生の修学旅行を目前に控え、旅行業者から貸し切りバスを断られた、との情報がSNSに投稿され、大きな話題になっている。

  その投稿によると、修学旅行が翌週に迫ったタイミングで、近畿日本ツーリストから「既に予約済みの1日目に利用するバス会社より、昨今のドライバー不足の影響により、貸切バスでの運行のお断りの連絡」があったと通知があったという。さらに、ほかのバス会社に当たっても、ドライバー不足で代わりのバスを手配できなかったとしている。

  同社は貸切バスの代替手段として、新幹線など鉄道での移動ルートを確保したとのことで、修学旅行自体は予定通り行われるようだ。

  Business Journal編集部は、近畿日本ツーリストにドライバー不足の影響について話を聞いた。

 ――町田の中学校で、修学旅行のための貸切バスが直前にキャンセルされたことが話題になっています。

 広報担当「バス会社では深刻なドライバー不足に陥っており、急遽貸切バスが手配できないと連絡があり、該当の中学校にはご迷惑をおかけしました。新幹線など代替手段を手配し、修学旅行は実施できるように対応いたしました」

 ――おそらく修学旅行などは年間スケジュールを組んでいると思いますが、直前になって人手不足が判明する事態になったのはなぜでしょうか。

 広報担当「バス会社の事情ではありますが、バスが確保できないとの連絡を受けた時点で、すぐに学校側に連絡を入れたほか、代替手段の確保に動きました」

 ――今回、修学旅行の1週間ほど前に貸切バスが運行できないと判明したわけですが、直前でドライバーが確保できないという事態はほかにもあるのでしょうか。

 広報担当「頻繁に発生しているわけではありませんが、ほかにも1件、同様のケースはありました」

 ――ドライバー不足は厳しい状況だと思いますが、今後、旅行業界ではドライバー不足を改善していくことは可能なのでしょうか。

 広報担当「推測でお話しすることはできません。また、バス事業者の事情についても予測することはできないのですが、今回のような直前でキャンセルが出るような事態は避けるように努めてまいります」

 ――2024年問題でドライバー不足が各業界に影響が出ていますが、旅行業界でもバスを利用した旅行を減らすなどの対応を余儀なくされているのでしょうか。

 広報担当「今後のことについては不確定な要素が多いのでお話できませんが、人的リソースなどを含めたキャパシティーを考慮して業務を受注してまいります」

  近畿日本ツーリストといえば、業界でも大手の旅行業者だ。提携するバス事業者も多いはずだが、その近ツーでも貸切バスの手配に難儀するという状況は、いかにドライバー不足が深刻になっているかを物語っている。

  インバウンド(外国人旅行者)の急速な増加に伴い、バスも含めた交通網の需要は高まっているが、運転手不足によってバスの運行本数は全国的に減る傾向にある。バス会社の関係者は、運転手確保の難しさを次のように語る。

 「バスの運転手は、そもそも給与が低い傾向にあります。私が知る限り、基本給が20万円台前半の企業が多いと思います。30代、40代になっても30万円を超えている会社は少ないと聞きます。それは、これまでは長時間残業が当たり前だったからです。基本給を抑えて、残業代を多く支払う給与体系が業界の常識になっていました。それが、残業時間に上限が設けられたので、基本給を上げざるを得ないのですが、国内のバス会社はほとんど赤字なので、大幅に上げることは困難です。そのため、採用も難しく、今いる人材も退職者が続出するなど、人手不足に拍車がかかっています」

  長時間労働や休日返上が当たり前になるなど、バスやトラックの運転手の労働環境は過酷だった。その環境を改善するために、国や国土交通省が労働時間に上限を設けたのは、ある意味で当然といえる。だが、人手不足を改善する対策は民間の事業者任せで、国が積極的にドライバーを増やす施策を行ったとはいいがたい。この問題は社会全体にも大きな影響を与えることから、国が主導して対策を講じてほしいところである。

BusinessJournal編集部

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