焼肉きんぐ、料理が注文の50分後に届く、店員を呼んでも来ない…なぜ?

焼肉きんぐ(「Wikipedia」より)

 今もっとも勢いに乗る人気の焼肉チェーン「焼肉きんぐ」をめぐって、SNS上では一部の利用客から「とろろご飯が注文から50分後に届いた」「黒烏龍茶は最後まで来ないままだった」「店員さんを呼んだら20分間誰も来ない」「レジで注文した品が来てないことを伝えたら『大丈夫ですか?』だけ」などといった投稿がなされ、話題を呼んでいる。オペレーション管理や店員教育がしっかりされていると考えられる大手チェーンで、なぜ、このような事態が生じるのか。昨今の外食業界の人手不足が影響している可能性はあるのか。専門家、そして「焼肉きんぐ」運営会社の見解を交えて追ってみたい。

 国内で約300店舗を展開する「焼肉きんぐ」は、店舗数ベースでは約600店舗を展開する牛角に次いで2位。焼肉に加えてバラエティ豊富なサイドメニューをそろえた食べ放題コースが人気を集め、「きんぐコース」は100分食べ放題、小学生は半額、幼児は無料で3608円。「焼肉きんぐ 五大名物」の「厚切り上ロース〜ガリバタ醤油〜」「壺漬けドラゴンハラミ」「きんぐカルビ」「炙りすき焼カルビ」「ねぎポンで食べる大判サーロイン」などのほか、「ひとくち冷麺」「石焼ビビンバ」「熱々!石焼ガリバタライス」「とろ~りチーズの石焼キーマカレー」といったご飯・麺類、各種スイーツや子ども向けメニューなどが充実している。

 運営会社の物語コーポレーションは「焼肉きんぐ」のほか、「丸源ラーメン」「寿司・しゃぶしゃぶ ゆず庵」なども運営。業績は好調で、24年6月期の売上高は前期比16.1%増の1072億円、営業利益は13.3%増の82億円、当期純利益は20.1%増の56億円と増収増益となっている。

 そんな「焼肉きんぐ」をめぐって冒頭の体験談がX(旧Twitter)上にポストされ注目されているが、これを受け、似たような体験をしたというポストが相次いでいる。

「一部の店舗では必要な人員の確保が十分に行えていない状況」

 そこで、物語コーポレーションに聞いた。

「このたびは、商品提供および対応の遅延により お客様にご不便をおかけしておりますこと、心よりお詫び申し上げます。ご指摘いただいた点につきましては、当社として既に認識しており、大変申し訳なく感じております。主要な原因として、予測を上回る多くのお客様にご来店いただいていることに加え、一部の店舗では必要な人員の確保が十分に行えていない状況が挙げられます。

 現在、こうした問題を解決するため、人員の採用強化、教育体制の充実、および従業員の定着を促進するための取り組みをさらに強化しております。お客様にご満足いただけるサービスの提供を目指し、今後も改善に努めてまいります。何卒、ご理解賜りますようお願い申し上げます」

一番の原因は人手不足

 オペレーション管理や店員教育がしっかり行われていると考えられる「焼肉きんぐ」ほどの大手チェーンで、なぜ、このような事態が生じるのか。昨今の人手不足というのが、影響している可能性は考えられるのか。自身でも飲食店経営を手掛ける飲食プロデューサーで東京未来倶楽部(株)代表の江間正和氏はいう。

「考えられる一番の原因は人手不足です。スタッフが急に欠勤したり(人が少ないので店員同士がフォローできない)、スタッフ教育が中途半端になったり(辞められると困るので厳しく教育できず、教育する側の人材もいない)、一人あたりの仕事量が増えるとさらに人が辞めるという悪循環が生じ、最後は呼んでもスタッフが来ない、料理が出てこないという事態になっていきます。私も先日100席ほどのある大型居酒屋チェーン店に行った際、厨房・ホールあわせてスタッフ1人で運営するワンオペになっていて驚きました。急遽スタッフが来られなくなったとのことでしたが、さすがに無理を感じました。これが日常的なことになれば、さすがにそのお店は潰れてしまうでしょう」

教育マニュアル活用の仕方には温度差

 飲食店はアルバイト従業員がいないと成立しないが、アルバイト従業員の入れ替わりが激しく、かつ個人によってスキルに差があるなかで、店側やチェーン運営会社は、店員教育やオペレーションというのをどのように行っているのか。

「大型チェーン店では、一応マニュアルは用意されていることが多いですが、その活用の仕方には温度差があります。多くのお店ではマニュアルを渡して『読んでおいて』で終わってしまうのではないでしょうか。街場のお店を含め、実際に働き始めてから現場を通じていろいろ教わり(OJT:オン・ザ・ジョブ・トレーニング)、それを教育としているお店が多いです。営業時間外に有給で事前トレーニングや教育をするようなお店は少ないと思います。『まず現場で学びましょう』となるのですが、現場に出てからちゃんと教えてもらえるかどうかは疑問です。

 教える人も忙しくて新人スタッフを放置してしまうことが多かったり、教えることが苦手な人もいたり、教え方を習っていなかったりして、新人のなかには早々に辞めてしまう人も出てきます。本来は、新人が入ってくるなら最初の数回は現場研修がスムーズにできるよう、スタッフを手厚く配置したり、教えるスタッフ側の教育やアイテムの準備をしなくてはならないのですが、昨今の人材不足でままならないのが現状でしょう。分かっていてもできない、または人材教育といっても具体的に何をどうしていいのか分かっていないお店も多いと思います」

(文=Business Journal編集部、協力=江間正和/東京未来倶楽部(株)代表)

江間正和/飲食プロデューサー、東京未来倶楽部(株)代表

東京未来倶楽部(株)代表
5年間大手信託銀行のファンドマネージャーとして勤務後、1998年独立。14年間、夜は直営店(新宿20坪30席)ダイニングバーの現場に出続けながら、昼間、プロデューサー・コンサル業。コンサル先の増加と好業績先の次の展開のため、2012年5月からプロデューサー・コンサル業に専念。
「数字(経営者側)と現場(スタッフ・オペレーション)の融合」「各種アイデア・提案」が得意。また、現場とのメニュー開発等、自称<「実践」料理研究家>。
・著書:『ランチは儲からない、飲み放題は儲かる』『とりあえず生!が儲かるワケ』『ド素人OLが飲食店を開業しちゃダメですか?』

Instagram:@masakazuema

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