丸亀製麺、600店舗に導入したモバイルオーダーを「終了」の英断…効果を重視
飲食店でモバイルオーダーを導入する動きが広まるなか、うどんチェーン「丸亀製麺」が全国600以上の店舗で導入済みのモバイルオーダーを10月末をもって終了し、注目されている。丸亀製麺はその理由について「利用状況などを総合的に判断した結果」と説明しているが、多額のコストと労力をかけて導入したモバイルオーダーを、なぜ終了するのか。また、大手チェーンのこの判断が業界全体の流れに影響を与えるのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。
国内で約840店舗(2024年3月末時点)を展開する丸亀製麺は、2位の「なか卯」(455店舗/同)、3位の「はなまるうどん」(約420店舗/24年2月末時点)を抑え国内うどんチェーン1位。「釜揚げうどん」(並/340円)や「ぶっかけうどん」(並/390円)などリーズナブルな価格のうどんに、「野菜かき揚げ」(180円)、「かしわ天」(190円)などのサイドメニューをお好みでトッピングできるのが特徴。国産小麦100%の讃岐うどんで、店舗ごとに職人が毎日、小麦粉からうどんを打つことで「打ち立て・茹でたて」を提供している。
期間限定メニューも積極的に投入しており、現在は「旨辛肉盛りまぜ玉うどん」(並/790円)を販売中。夏恒例の「丸亀シェイクうどん」も人気メニューのひとつだ。
システムを維持するコストは小さくはない
丸亀製麺は持ち帰りサービスにも力を入れている。うどんと天ぷらが入った「うどん弁当」のほか、お好みのうどん、天ぷらなどのサイドメニューを選んで購入することも可能。麺とだしを分けて提供することで、麺が伸びることを防ぐよう工夫している。
モバイルオーダーが導入されていたのは、この持ち帰りサービスだ。21年2月から600以上の店舗でレジでの待ち時間ゼロを目的にスマホでの事前注文受付を開始。注文ページ上で利用する店舗とメニューを選択し、受取時間やクレジットカードなどを入力し、受取時間に店舗を訪問して受取口で商品を受け取るという流れだ。
丸亀製麺の店舗ではピークタイムに入口の外にまで行列ができている光景も珍しくなく、モバイルオーダーで待ち時間なしで受け取れるとなれば便利にも思えるが、なぜ終了するのか。
PDFツール「AxelaNote」を開発・販売するTransRecog代表の小林敬明氏はいう。
「導入時期がコロナの真っただ中であり、3密の解消という目的もあったとみられますが、コロナが落ち着き密の解消の必要が薄らいだという背景も影響しているでしょう。『うどん』は作り置きができず、かつ丸亀製麺はセミセルフオーダー方式であるため、モバイルオーダーへの対応のために店員の作業プロセスが複雑化して負荷が重くなってしまった、要はモバイルオーダーには不向きな業態であったという理由も考えられます。それでも利用者が多ければ継続したのかもしれませんが、お客側も店舗でメニューや実物を見て選ぶという行動から抜けられず、利用者数が低迷していたのかもしれません。
モバイルオーダーのシステムを維持するコストは小さくはないため、費用に見合うほどの一定の効果が出ていないと判断すれば終了することになります」
業界全体の流れを大きく変える可能性も
今回の終了の判断をどう評価すべきか。
「たとえばマクドナルドのモバイルオーダーは席に着いてからスマホで注文し、店員が商品を席まで運んでくれるというかたちで店内飲食でも利用可能なのに対し、丸亀製麺のモバイルサービスは持ち帰り限定になっていたので、やや中途半端感があり、その点の判断は評価が分かれるところでしょう。一方で、丸亀製麺の運営会社であるトリドールホールディングスはトライ&エラーを繰り返しながら改善を進めていくという姿勢で知られており、多額のコストと店舗従業員へのオペレーション教育を含めた大きな労力を投下して導入したサービスであっても、効果が低いと評価すればきちんと終了させるという経営判断は評価すべきです。
飲食業界ではモバイルオーダー導入の動きが広まっていますが、今回の丸亀製麺の判断が業界全体の流れを大きく変える可能性もあるでしょう」
(文=Business Journal編集部、協力=小林敬明/TransRecog代表)