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脱炭素無視?のトランプ政権。カーボンクレジット企業は息してる?

2025.05.02 2025.05.02 20:26 企業

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2025年1月に誕生した第2次トランプ政権。就任早々「パリ協定」からの脱退を決め、再生可能エネルギーへの政府支援を大幅に縮小すると発表。これにより、アメリカの脱炭素の動きが後退し、脱炭素業界やカーボンクレジット企業に対し急速に逆風が吹いているのでは? という懸念がささやかれています。

カーボンクレジットとは、企業間でCO2の排出削減量を売買できる仕組みのこと。他社の削減分を購入し、自社の排出分を相殺するものです。
実際、トランプ政権下においてカーボンクレジット企業は大丈夫なのでしょうか?また、カーボンクレジットの活用は変わっていくのでしょうか?

今回は、自然由来のカーボンクレジット創出および販売事業を行うGreen Carbon株式会社 代表取締役 大北潤氏に、トランプ政権下における脱炭素業界への影響や日本のカーボンクレジット企業の今後、Green Carbon株式会社の展望などについてお聞きしました。

カーボンクレジット市場への逆風は日本への追い風に!? 

ーー第2次トランプ政権の誕生で、アメリカが急速に脱炭素領域から距離を置いているように見えます。これによって、脱炭素の流れに逆風が吹いていると感じますか?

アメリカのパリ協定からの脱退は、ダイナミックな動きではあるものの、潮流の変化や逆風はないと感じています。すでにアメリカでは、民間企業が脱炭素に向けて動き出していますし、トランプ政権の方針を見て、企業が「脱炭素に関わるアクションをストップする」という動きをしている様子もないですね。また、トランプ政権の動きに対して私や当社は、「環境問題に興味がない」ということではないと解釈しているんですね。トランプ政権には「アメリカ経済にプラスになること以外はしたくない」という意図があり、今後環境分野がアメリカ経済に対してポジティブに働くようになれば今とは違う動きになると考えています。

ーー日本にもあまり影響はない、と考えていますか?

そうですね。日本においても、三井住友フィナンシャルグループや野村ホールディングス、農林中央金庫などが、脱炭素をめざす金融機関の国際的な枠組み「ネットゼロ・バンキング・アライアンス(NZBA)」から脱退したという動きはあるものの、これは数ある団体のひとつからの脱退にすぎず、脱炭素に舵を切ろうとしている国の方針を否定するものではありません。逆に、日本企業にとってはチャンスであるとも考えています。

ーートランプ政権の動きが、日本企業にとってプラスに働く理由はなんでしょうか?

現状アメリカが脱炭素などの環境分野から距離を置くということは、極端にいえば「国としてGX企業を支援しない」ということです。環境分野などの社会課題解決型の事業は、国の政策と補助金ありきで成り立っているものも多いので、アメリカにおいて環境分野のスタートアップ企業が減少する可能性もあると考えています。
そうなると、日本やEU発のGX企業が台頭しやすくなりますよね。我々のような企業がナンバーワンになれる可能性がある分野だと感じています。

カーボンクレジット購入なしで、CO2ゼロはほぼ不可能


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ーートランプ政権の動きがありつつも、世界的に脱炭素、ひいてはカーボンクレジットの市場は盛り上がってきていると感じますか?

感じますね。そもそも経済活動において、CO2を出さないものはほとんどありません。
事業を行っていてCO2をゼロにするのはほぼ不可能に近いんですね。ただ現在排出しているCO2を圧縮して削減しようという対策だけでは削減目標を達成できないため、カーボンクレジットを購入することで補うというのが世界的に主流になっています。
カーボンクレジットの購入にとどまらず、排出量の削減に対して抜本的に取り組んでいる企業も多いです。
たとえば、再生可能エネルギーである太陽光パネルをつくる際にもCO2は排出されています。CO2を出さないのは植物などのネイチャーベースの活動に限られ、その分野に関心を向ける企業も増えていると感じますね。

東証カーボン・クレジット市場がイマイチ伸びないワケ

ーー一方で、2023年に開設されたJ-クレジットのカーボンクレジットの取引市場である「東証カーボン・クレジット市場」がうまくいっていないのではないか、といわれています。

東証カーボン・クレジット市場が軌道に乗っていないといわれる理由は、大きく3つあると考えています。

1つ目は、「適正価格がわからない」というものです。
J-クレジットは、省エネクレジット、森林クレジットなど6つに区分されていて1トンあたりいくらと値付けされて取引されるのですが、果たしてその値段が適正なのかどうかがまだ誰もわかっていません。
現在の価格で購入してよいのか判断がつかず、多くの企業が様子見をしている状態です。

2つ目は、「長期目線での購入が難しい」ためです。
多くの企業は日本が2020年に掲げた「2050年に温室効果ガスを実質ゼロにする」という、2050年カーボンニュートラル宣言を目指して動いています。
この場合、企業は2050年の目標に向けたCO2削減量と、必要なカーボンクレジットを計算します。2050年に照準を定めているのに、現在の東証カーボンクレジット市場で承認されたクレジットを取得しても、2050年のCO2排出に対して利用できるかが、現状では不明確なのです。

3つ目の理由は「カーボンクレジットの発行量が不足している」ことです。
J-クレジットは毎年100万トンのカーボンクレジット登録を目標にしていますが、現状では100万トンに至っていません。
一方で、1社だけで2,000万トン以上のカーボンクレジットを必要としている企業などがあります。そういった企業は東証カーボン・クレジット市場を通さず、数十年単位の長期で安定的にカーボンクレジットの取引ができる企業や農家と個別契約を結んでいるのです。

ーーこのような現状を鑑みて、東証カーボン・クレジット市場はどうなっていくと考えていますか?

長期的な取引については、現在と同じく企業間で個別に行われたり、長期取引を目的とした新たなプラットフォームが生まれたり、という動きが出てくるのではないかと予想しています。
一方、今目の前の排出量に対してカーボンクレジットが必要という状況も増えていくと感じます。この場合は、東証カーボン・クレジット市場で取引されることになるのではないでしょうか。

カーボンクレジットの選び方、日本と海外でこんなに違う


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ーー目の前のCO2排出量に対してカーボンクレジットが必要、という状況は、2026年からCO2排出量が10万トン以上の企業に、排出量取引の義務化がスタートすることも関係しているのですか?

そうですね。10万トン以上CO2を排出している企業は現状で300〜400社ほどですが、サプライチェーン上にある中小企業に対してもCO2排出量削減のオファーがくることは必至です。規制は順次、多くの企業に対して行われていくので、随時必要なだけのクレジットを取引するという動きは出てくると予想しています。

ーー現時点で日本は、2050年の目標に対して達成ペースを維持しているといわれていますが、いわゆる義務的な部分を意識して動いている企業が多いのでしょうか?

もちろん、環境問題を意識して取り組んでいる企業も多いです。
しかし、環境問題や脱炭素に対してのマインドはEUなどとは違うと感じますね。EUは、根底から「環境をよくしていこう」という考えて行動しているのですが、日本ではまだ個人レベルでも企業レベルでも「なんとなくやったほうがよさそう」「やれば最先端をいっている気がする」という意識で行動している部分が大きい気がします。
2050年までの目標達成ペースを維持するなど、日本がうまくいっているように見えるのは、規制に対するルールがしっかりしているためです。ルールに則って個々が少しずつ、確実に動いているからだと思います。
環境問題に対する根底的な考え方は、日本と海外のカーボンクレジットの取引でも見てとれます。

ーー日本と海外、カーボンクレジットの購入にどのような違いがあるのでしょうか?
日本では、国が認めている、かつ価格が安いカーボンクレジットを購入する企業がほとんどです。

価格が安いカーボンクレジットとは、省エネクレジットなどの「排出する量を抑制する」というリダクション(Reduction)系のカーボンクレジットが多いですね。リダクション系は創出にコストがかからないため、1トンあたりの価格が安価になります。

一方、海外では、国に認められたカーボンクレジットでなくても、企業ごとのルールに沿ったもので、環境に対してよいものであれば購入するという傾向があります。
更地に森林をつくってCO2を吸収するなどの、「CO2を除去する」リムーバル(Removable)系のカーボンクレジットを購入する企業も多いですね。リムーバル系のクレジットの創出はコストがかかるため価格も高いのですが、GAFAなどのIT大手が積極的に購入していると聞きます。

我々Green Carbon社も、日本と海外のカーボンクレジットに対する意識の違いなどを鑑みて、それぞれのニーズに合ったカーボンクレジットを提供するなどのアプローチができればと思っています。

カーボンクレジットを通じて一次産業を盛り上げる

ーー今後、Green Carbon社がカーボンクレジットを通じて実現したいことを教えてください。

我々は2050年までに、「日本のカーボンニュートラルをGreen Carbon社の1社で達成する」ということをミッションとして掲げています。
そのためには、CO2排出量の多い企業が我々のような企業にどのようなプロダクトを求めているのか、そういった企業といかに長期的にリレーションを保っていくのかなど、考えられる挑戦をすべて行っていくことが必要です。

また、カーボンクレジットを通じて農業などの一次産業を向上させることも、ミッションのひとつです。
我々が現在行っている水田クレジットなどの申請にはデータが必要なので、農家の方々から農業データをいただいています。このデータがあれば、どのような天候の場合に、どういった農作業を行えばそれだけ収穫量が変化するのかという部分もわかるようになるのです。これによって、これまでの日本の農業においておろそかになっていた生産効率の向上にも寄与できますし、日本では当たり前の生産方法を、まだその方法を知らない海外に持っていくこともできます。

農家の方々をビジネスに引き込むのは相当な労力が必要で、大企業はあまりやりたがりません。カーボンクレジット取引をフックにすることで、農家の方々にもメリットがあることを伝えられることは、我々の大きなアドバンテージであると自負しています。

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 「実は環境分野の事業は黒字化が難しい」と話す大北氏。「ビジネス」の人であるトランプ大統領がトップとなったアメリカの環境分野やカーボンクレジット市場に対する動きは、こういった事情が影響しているといえます。大国が環境分野に消極的である現在、日本が、環境と経済の両輪を実現するカギを握ることになるのではないでしょうか。

カーボンクレジットをはじめとする環境分野における、日本の国際競争力の成長に、期待がふくらみます。日本において、カーボンクレジットはまだまだ発展途上の分野。
Green Carbon社にて、カーボンクレジットに関する質問や問い合わせも可能です。

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※この記事はPR記事です

BusinessJournal編集部

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