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パナソニック、新収益源育成への密かな挑戦~創職系立国のカギ、社内ベンチャーの可能性

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パナソニック、新収益源育成への密かな挑戦~創職系立国のカギ、社内ベンチャーの可能性の画像1「アクティブリンク HP」より
 日本の大企業で30代前半といえば、中間管理職として走り始める頃だろう。いや、ポストが少なくなってきた今、中間管理職になることさえ難しくなってきた。ましてや、トップの座に就くのは宝くじに当たるようなもの。

 ところが、売上高7兆3030億円(2013年3月期)、従業員29万人(同)のパナソニックには、32歳にして代表取締役社長に就任し、その後10年間、陣頭指揮を執り続ける猛者がいる。同社の社内ベンチャー、アクティブリンクを率いる藤本弘道氏である。

 同社は、重作業支援向けパワー増幅ロボット「パワーローダー」と、その機能を絞り30キログラム程度の重量物の運搬に対応した量産品「パワーローダーライト」【註1】の開発・商用化を目的とするベンチャー。同製品をわかりやすく説明すると、ギプスのような器具を身につけ、力が弱くても重労働ができるようにした装置、つまり電動アシスト自転車の肉体労働版のようなものである。

「パワーローダーライト」については、年間1000体の生産をパナソニックに委託し、15年に発売する。価格は一着50万円程度になるもようで、災害救助や原子力発電所内など短時間での作業が求められる現場での利用を想定している。将来的には、宇宙や深海などでも使える機種も開発する。

 藤本氏は1970年7月21日、大阪府寝屋川市に生まれ、奈良県大和郡山市で育った。親が商売をしていたわけでも企業家だったわけでもない。公務員を父に持つ平凡な男の子だった。自我が芽生え始めた頃から、「父と違った仕事をしてみたい」「父を超えたい」という願望を持つ男子は少なくない。小学校6年生になった藤本氏も「社長になってみたい」と子供心に考えるようになっていた。

 その後、青春期を迎え、その気持ちは変わるどころか大きく膨らみ「青雲の志」となる。ところが現実は甘くないことに気づく。会社を起こすには、まとまった金がいるではないか、何よりもビジネスプランがないことには話にならない、と。

 大学受験を迎えたとき、自分が成長する上で条件が整っている「大企業に就職しよう。そのためには地元の有名大学に行くのが有利だ」と考えた。理科系に興味があった藤本氏が進路として選んだのが大阪大学工学部の原子力工学。現在の藤本氏のキャリアと不一致である。

 いうまでもなく、パナソニックに原子力部門はない。その点について藤本氏に聞いてみると「入試倍率が低い専攻を探すと、原子力に目が留まりました」と答えた。ベンチャーは競争しないのが最強の競争力と考え、他社にはない製品、技術やサービスで新市場を開拓しようとする。藤本氏も大学受験で同様の意思決定をしたことになる。藤本氏は大学院まで進み、97年3月に修了し、同年4月に希望通りパナソニックに就職した。めでたく大阪を代表する大企業に入社できたものの、夢はすぐに破れた。

 若者が望むセクションは華々しい部署だが、実際には思い通りにならないことのほうが多い。案の定、藤本氏が配属されたのは地味なモーター社。その中でも最も地味な材料部門を担当することになる。心の奥底では「社長になりたい」という夢を持ち続けていた。そのせいか、「このままでいいのか」という思いは募るばかりであった。

●アクティブリンク創業へ

 経営の四要素は、ヒト、モノ、カネ、情報だが、ビジネスプランらしきものがあっても、ヒト、モノ、カネがない。どうすれいいのか、と思案していたところ、2001年に「パナソニック・スピンアップ・ファンド(PSUF)」という社内ベンチャー制度が発足。同年10月、藤本氏はPSUF制度にさっそく応募した。本社在籍のまま、出向というかたちで社長になれるという条件が魅力的だった。

BusinessJournal編集部

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