●マクドナルドが低迷している理由
日本マクドナルドの低迷が著しい。低迷を引き起こした原因は、原田泳幸・前CEO体制下で同社が進めてきた「マックカフェの増加とFC(フランチャイズ)推進戦略」だ。マックカフェの導入を進めると同時に、期間限定でのキャンペーンも加速させた。期間限定メニューや定番商品を含むディスカウントだ。おしゃれなカフェということでメニュー表を店舗からなくしたこともあり、店員の対応スピードは明らかに落ちた。
そして、店舗をおしゃれにした結果、従来マクドナルドのメイン顧客であったファミリー層離れが加速し、2013年度通期連結決算発表によれば、来店客数は前年比でマイナス6.1%。ここには戦略的閉店とされた74店舗の影響も含まれるが、マクドナルドの総店舗数(13年度末時点で3146店舗)からしても6.1%のマイナスは大きく、明らかにファミリー層離れという現実が見えてくる。
ファミリー層離れを引き起こした要因として、マックカフェ化の導入が挙げられる。店内はおしゃれになった分、家族でわいわいがやがや楽しめる雰囲気でなくなり、テーブルや椅子が固定されたため、大人数での来店がしづらくなった。パソコン電源が配置されたこともあり、一人で黙々と仕事をしている人、一人か二人で長居している高齢者の姿が増えた。
その結果、外食をするファミリー層がファミレスへと流れ、自宅での食事に切り替える人も増えた。コンビニ各社が料理メニューを充実させ、中食はブームになった。ちなみに、このマクドナルドから流出したファミリー層を獲得するというのが、13年の牛丼業界各社の戦略だった。
このほかにも、定番メニューまで期間限定でディスカウントしたことや期間限定メニューの頻発によって、客側からすると、マクドナルドに割高感を感じることが多くなる結果にもなった。経営的にはFC化の加速は、マクドナルド全体の利益率向上には貢献した。しかし、FC推進を含む一連の改革によって、マクドナルドの魅力であった店員のスマイルと素晴らしい店頭オペレーションは失われていった。
●ファミリー層を、いかに呼び戻すか?
14年2月、マクドナルドは14年度の戦略を発表し、3点のポイントを掲げた。「マクドナルドの独自性強化」「変化するお客様の需要への対応」「店舗環境の刷新」だ。ここからもマクドナルドはマックカフェ戦略をますます推進する姿勢が見えてくるが、マックカフェ化でファミリー層は戻ってこない。マクドナルドにとって、コアターゲットであるファミリー層を呼び戻すことは喫緊の課題であるとの認識を持つサラ・カサノバ現CEO(13年就任)は、子ども向けメニューであるハッピーセットの広告を増加させている。テレビCMを見た子どもに「マックに行きたい!」と言わせるようにすることを狙っているのだ。
実は、ファミリー層を呼び戻すということは、普段働いている大人のマクドナルド利用頻度を上げることにもつながる。マーケッターの視点で数多くの消費者へインタビューをする中で筆者が感じるのは、マクドナルドの中毒性だ。味覚は人によって異なるが、実はマクドナルドの商品を「すごく美味しい」と思っている消費者は少ないが、なぜか癖になるのだ。