ドコモは昨年11月の携帯通信端末(以下、端末)月間契約件数が、2カ月連続で純増となったのを機に、翌12月は2年ぶりで月間契約純増数首位に返り咲いた。明けて今年1月、純増数がまたもや3位に転落したが、翌月は首位を取り戻し、3月は2位と、まずまずの健闘を示している。
業績も好調だ。ドコモが1月31日に発表した14年3月期第3四半期(13年4-12月)連結決算の最終利益は前期比3%増の4301億円で、第3四半期としては2期連続の増益を記録した。同日記者発表した加藤薫社長も、「競争力は確実に回復している」と自信を示した。
しかし、携帯通信業界内では、このドコモのiPhone効果に首をかしげる向きが少なくない。業界関係者たちが携帯通信事業の採算性を示す指標の1つにしている「ARPU(アープ:1契約者当たりからの月間平均収入)」が下落しているからだ。
データ通信料が大きいスマートフォン(スマホ)は当然、ARPUが高い。ドコモのARPUも例えばiPhone拡販で契約数が純増に転じた昨年10-12月は5250円。前年同期比10円の上昇を示している。だが同社のスマホ拡販向け割引サービス「月々サポート」(端末購入後最大24カ月、一定額を毎月の利用料から値引き)の値引き分を差し引いたベースでは4510円。前年同期比では逆に340円の大幅減収になっている。
ARPU押し上げ効果が高い客は他の携帯電話キャリアから乗り換えた新規契約者であり、同一キャリア内で従来型携帯電話をスマホに買い替えるケースより押し上げ効果が高い。ここからiPhone効果の正体が透けて見える。業界関係者の一人は「ドコモの純増は、同社の従来型携帯電話ユーザの『ドコモiPhone乗り換え組』が大半」と指摘する。つまり、ドコモのiPhone効果は、新規ユーザ獲得にはあまり役立っていないというのだ。
●iPhone需要の頭打ち
同社が重い腰を上げ、米アップルのスマホ・iPhone販売に参入したのは昨年9月。08年にソフトバンク、11年にau(KDDI)の販売参入を尻目に、ドコモは販売ノルマや独自のコンテンツサービス提供に制約のあるiPhone販売に5年間参入しなかった。この間、iPhoneを求めるドコモユーザがソフトバンクやKDDIに流出。時には10万人規模で流出する月もあった。業績も営業利益8000億円前後で停滞し、株価も長期ではジリ貧状態になっていた。
その窮状を打開しようと、昨年5月に韓国サムスン電子・GALAXYとソニー・Xperiaを低価格で集中販売する「ツートップ戦略」に打って出たが、期待通りの成果は上がらず、実質的には空振りした。そこでついにiPhone参入となったわけだが、そこで待ち受けていたのはiPhone失速だった。