これは数字にも表れている。キャリア3社の昨年4-12月の端末販売台数は、ドコモが9%減の1607万台、KDDIが5%減の779万台。ソフトバンクが唯一5%増の988万台と頑張ったが、全体では前年同期比4%減の3374万台だった。3社の端末販売台数はiPhone人気に牽引されて右肩上がりで上昇、12年度はiPhone登場後は最高の4918万台に達した。それが13年度は一転、4700-4800万台にとどまる見通しだ。
販売店も伸び悩んでいる。市場調査関係者によれば、「ドコモショップ」などキャリアのブランド名を冠にしたキャリアショップの数は全国で約7800店で、この1年ほとんど変わっていないという。
iPhone失速の原因と見られているのが、iPhone需要の頭打ちだ。前出の業界関係者は「アップルはほぼ1年おきにiPhoneの後継機を発売するが、最新の5s/5cはユーザにとって前モデルの5と比べてそれほどの目新しさがない。このため、買い替えるユーザが少ない。また、音声とメール利用主体のユーザは従来型携帯電話で満足している場合が多く、こうしたユーザがiPhoneに買い替えるケースも少ない」と指摘する。
●乱売合戦の果て
こうした需要頭打ちを背景に、今年2月以降本格化した春商戦は乱売合戦の様相を見せた。
「他社キャリアからの乗り換えには1台当たり7万円をキャッシュバック(現金還元)」「家族3人で最大24万円還元」。大手キャリア3社の販売店がしのぎを削る大都市圏の「iPhone激戦区」には、そんな集客POPが溢れている。端末販売価格を実質ゼロ円にしている店も多い。
こうした乱売合戦の原資は各キャリアの販促費だが、証券アナリストは「大手3社の場合、値引き向け販促費だけでドコモが約3600億円、ソフトバンクが約3500億円、KDDIが約2900億円。3社合わせて1兆円程度(いずれも12年度)」と推測する。
加えて、大手3社は割引サービスでも乗り換え合戦を繰り広げている。ドコモ「月々サポート」、KDDIの「毎月割」、ソフトバンクの「バンバンのりかえ割」などがそれだ。業界では、こちらも3社合わせて約1兆円の出費と見られている。
iPhone乱売合戦に巻き込まれたドコモは、体力を消耗し、音を上げているようだ。前出とは別の業界関係者は「加藤社長は4月1日の入社式で『端末での差別化は難しく、当社が強みとしているネットワークでも差別化が難しくなった。これからはサービスで勝負しなければならない』と、危機感も露わに檄を飛ばしていた」という。