ビジネスでは、同業他社といかに差別化をはかるかというところに苦心します。自社の強み、自社にしかできないことなどを探し、自社のPRや事業そのものに反映して売上を伸ばしていくのです。
しかし、ただ差別化をはかっても成功するとは限りません。社会のニーズや、今後の流行予測などを考えながら、イノベーションを起こし続けていくことが必要になります。アップルやスターバックス、日本ならば無印良品。こうした企業たちがイノベーションを起こし続けられるのはどうしてなのでしょうか。
その秘密は「コンセプト」にあると言うのが、ブランド・コンサルタントでクリエイティブ・ディレクターとしても活躍している江上隆夫さんです。
「コンセプト」の使命は「課題を解決すること」で、往々にして優れた「コンセプト」ほど簡にして要を得た、短めの言葉になっています。
あの商品やブランドの「コンセプト」とは?
例えばソニーの「ウォークマン」は「場所や時間を問わず音楽を気軽に楽しむ」というコンセプトです。「ウォークマン」が開発された1980年前後頃は、「録音できないテープレコーダーなんか絶対に売れない」と言われていた時代。その中で「小型・高品質の再生専門装置」の開発に邁進し、音楽の聴き方を一新してしまいました。
その「ウォークマン」を継ぐような革新的な製品といえば、アップルの「iPod」です。「iPod」登場時のコンセプトは「1,000 songs in your pocket.」(1000曲をあなたのポケットに)というもので、この言葉から音楽の消費の仕方がガラリと変わり、音楽産業の構造さえも変えてしまうことになったのです。
江上さんが執筆した『無印良品の「あれ」は決して安くないのに なぜ飛ぶように売れるのか?』(SBクリエイティブ/刊)のタイトルでも引き合いに出されている無印良品のコンセプトは「これでいい」。「これがいい」ではなく、控え目でありながらも必要十分なクオリティを誇っていると印象付ける「これでいい」は、消しゴムから家まで、幅広い商品を扱う無印良品のブランドを100%近く表現しています。「が」を「で」に変えただけ。その一文字の変換が成功につながったのです。
日本人は「コンセプト」づくりが苦手?
しかし、こうした「コンセプト」はできそうでなかなかできないもの。江上さんは、特に日本企業は「コンセプト」を活用する前提である、事前に原理・原則を立てて物事を進捗させるやり方を得意としていないと言います。
もともと、日本人はさまざまな体験の中から共通する「型」を見出し、その「型」を磨くことで物事を進めてきた側面があります。「型」通りにやっていれば、どんな人でもある程度一定の状態に達します。
しかし、これは時代の流れが速い現代においては、もろ刃の剣でもあります。「型」を重要視してしまったため、想定外のことに対応できない、新しいルールをつくることができないといったマイナス部分が顕在化してしまっているのです。
今や、世界は「誰がルールをつくるか」の戦いとなっています。いまの時代、成功するために「型」はもちろん大事ですが、それと同時に「コンセプト」の重要性が、これまでになく高まっているのです。
『無印良品の「あれ」は決して安くないのに なぜ飛ぶように売れるのか?』は世界のブランド作りの根幹である「コンセプト」について、その概念から作り方、使い方までを、これまでにないほど分かりやすく丁寧に解説している一冊。
無印良品のようにたった「5文字」のコンセプトで、日本にイノベーションを巻き起こしたブランドもあります。自分の会社をどうPRしていくか、自社の商品をどう売り込んでいくか、全ての企業の悩みに答えてくれる一冊です。
(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。