(1)日常生活と監視社会
企業における情報漏洩や食品の安全性等に問題が発生すると、監視体制の強化に注目が集まります。例えば誘拐事件の捜査では、事件発生場所近くから徐々に周辺に拡大していくように、監視カメラ映像の回収や分析が行われます。現在では繁華街やコンビニエンスストア、ドラッグストアなどに多数の監視カメラが設置されており、事件調査時などに活用できるよう膨大なデータが集められています。
映像から本人を特定するための分析技術はさらに発展しており、表面的な身体的特徴を人間の力で判断するだけではなく、歩き方やしぐさ、整形できない顔のパーツによる認証など、本人性を確認する手段の多様化が進んでおり、プライバシー保護とのバランスが難しくなってきているという問題も指摘されています。
(2)情報漏えい事故で議論される論点
ベネッセから大規模な情報流出事故が起こり、同業他社や消費財を扱う複数の企業が流出した個人情報を営業活動に使用していた事実が発覚しましたが、企業の責任や監視体制、セキュリティ認証の有効性など、現在もさまざまな対策について広く議論がなされています。
その中でも、ルールとしてやってはいけないことを発生させないように「いかに企業の側が対策を行うのか」が重要であり、リスクマネジメントの一環として「いかに罪を犯さないように環境を構築するか」は、今後さらに議論の深化が求められてきます。ちなみにITを活用した監視は、IT機器の操作履歴や変更履歴(ログ)の管理と、一般的な監視カメラ等による挙動の監視に分けられますが、本編では後者について考察していきます。
ちなみに、万引き(窃盗)抑止の最も有効な手段が「店員による声掛け」(都道府県発行「万引き防止マニュアル」より)であると認識されており、流通・外食業界における人材不足が社会問題化しつつある中、企業は万引き防止と人材確保という2つを両立させるための新たな取り組みを行わなければなりません。
(3)犯罪と監視カメラ
7月、岡山県倉敷市で女児誘拐監禁事件が発生し、誘拐発生エリアの監視カメラ映像を集めていく警察の動きに注目が集まりました。目撃情報を集め、不審車両の情報から容疑者を絞り込み、さまざまな証拠を元に捜査が進められましたが、犯人の「大量のお菓子を買い込んでいた」という非日常的行動が逮捕につながりました。行動の特異性を確認するためには、日常の行動が把握されていてはじめて判断できるため、近隣住民や近隣店舗等からの適切な情報収集が犯人逮捕につながったものと思われます。情報収集の方法が露骨であったためさまざまなリスクが想定されたという批判も一部からは寄せられましたが、早期解決に向けて積極的に活動した結果といえるでしょう。