植物工場は、輸出産業としても期待されている。日本企業には、植物工場に必要な技術やノウハウの蓄積がある。例えば、電力供給のための再生可能エネルギー技術、工場内におけるLED照明、空調制御技術など、日本が得意とする技術は植物工場に欠かせない。
また、ロボットも植物工場には欠かせない技術だ。安川電機は、ロボット技術を活用して種まきから成長度合いの観測、収穫、包装、出荷までのほぼすべての工程を自動化するシステムを開発中である。このほか、海外の日本食ブームも、植物工場の海外進出の追い風になっている。日本食には野菜が欠かせないだけに、植物工場とその運営ノウハウをまるごと輸出するチャンスといえるのだ。
以下、植物工場の海外進出例を挙げてみよう。
三菱ケミカルホールディングスグループの三菱樹脂アグリドリームと地球快適化インスティテュートは、豪州でホウレンソウなどの葉物野菜を栽培する植物工場を展開中だ。豪州の厳しい環境条件において、日本と同じ高品質の野菜を栽培している。
また、シャープは、中近東でイチゴを栽培する植物工場の実証実験を開始した。甘くてジューシーな日本のイチゴは海外でも高い人気があるが、傷みやすく日持ちがしないため、海外市場での流通は困難だ。シャープは、LED照明を用いた光制御、プラズマクラスター技術を活用した温度管理など保有する技術を活用し、いちごの生育環境をきめ細かく制御し、安定した生産と高い品質の実現を計画している。
パナソニックファクトリーソリューションズは、シンガポール初となる植物工場で栽培した野菜を現地で日本食レストランを展開する「大戸屋」に供給すると発表した。パナソニックファクトリーソリューションズが栽培するのは、ミニ赤大根、サニーレタス、水菜の3種類で、現地の大戸屋3店舗に直送する計画という。大戸屋のシンガポールでの日本食レストランの展開は、植物工場の活用抜きには考えられないのだ。
●地域活性化の担い手として
植物工場には、実は地域活性化の起爆剤としての役割も期待されている。クリーンな植物工場は3Kイメージの強い旧来型の農業とは異なり、あらゆる人が働きやすい職場環境を実現している。若い人はもちろんのこと、女性や高齢者が活躍できる職場として、今後地域の雇用創出に大きな役割を果たしていくのは間違いないのだ。