今月、青色発光ダイオード(LED)開発への功績が認められ、中村修二・米カリフォルニア大サンタバーバラ校教授がノーベル物理学賞を受賞したが、その報道において、その中村氏と元勤務先である日亜化学工業の間で過去に繰り広げられた特許権をめぐる法廷闘争がたびたび取り上げられ、再びクローズアップされている。
この特許権を含む知的財産権(以下、知財)とは、モノに対して個別に認められる財産権とは異なり、アイデアや表現、技術などかたちのないものの権益を保証するために与えられる財産権であり、著作権をはじめ、特許権、実用新案権、商標権、肖像権などがある。知財はそれを生み出した人や組織の財産として、第三者が許可なく勝手に使えないよう持ち主の権利を一定期間保護するようにしたルール、知財制度が整備されている。
例えば、新機能を備えたパソコンの生産方法など独創的なアイデアや新しい技術は「発明」と呼ばれ、特許法によって保護される。日用品の改良工夫などの小発明は「考案」と呼ばれ、実用新案法で保護される。工業製品のデザインは意匠法、企業のブランド名や商品のネーミングなどは商標法によって保護される。そして、音楽や絵画・小説などは著作権によって保護される。詳細は経済産業省のHPに掲載されている「知的財産権の種類と保護の仕組み」を参照いただきたい。
日本は特許権侵害などの訴訟において、審理期間、判決の正確性・信頼性のいずれについても高い水準にあるといわれているが、具体的にどのような事例が特許権の侵害に該当するのであろうか。
【事例1】
大ヒットして映画化もされた人気小説と、時代背景や登場人物の相関関係、ストーリーもほぼ同じだが、登場人物の性別や性格、細かい物語の展開などは微妙に違うマンガ。
【事例2】
大ヒットして映画化もされた人気小説をパロディ化したマンガ。時代背景や登場人物の相関関係、ストーリーは違うが、登場人物や展開などは原作のパロディであることがわかる作品。
この場合、事例2が違法で、事例1は合法になる。一般的には違和感が残りそうな判断だが、著作権法制度の趣旨はあくまで「表現を保護」であり、従って表現の基となる「着想」や「アイデア」は著作権保護の対象外なのである。他人の著作を基にしていることが明らかな「盗作」であっても、著作権法上は問題とされない一方、風刺やパロディなど、異なるコンセプトで他人の著作物を利用した場合は著作権侵害に該当する。