2011年11月、スマホ向けゲームなどを手掛けるIT企業・株式会社ディー・エヌ・エーが、それまで4年連続最下位だった横浜ベイスターズの株式を取得し、プロ野球球団の運営に乗り出してから3年目のシーズンとなったが、この間に観客動員数は実に42%も伸びた。この急増の背景には、チームの健闘もさることながら、球団経営における戦略的なマーケティングがあったという。そこで今回はベイスターズ球団代表取締役社長である池田純氏に
「観客動員数増加に向けた、新たなマーケティング戦略とは?」
「アクティブサラリーマンと女性を重視する理由」
「リピート率アップに向けた施策とは?」
などについて話を聞いた。
――球団経営に関する主要な数字が、軒並み昨年比でアップした要因はなんでしょうか?
池田純氏(以下、池田) 事業の成長とチームの成長という両輪が、うまくかみ合ったことだと思います。チームの成長とは成績だけでなく、期待値が高まったことです。入場料を支払って観たいと思われる試合が多いチームに成長できました。観客動員数は、日本一になった1998年の水準に近づいています。
一方、事業が成長した要因は主に3つあります。第1に、アクティブサラリーマン層【編註1】へのアプローチが功を奏したこと。第2に、女性向けイベントやチケット企画を増やし、女性ファンが増加したこと。第3に、「I ●(正式表記は星マーク、LOVE) YOKOHAMA」プロジェクトを推進して、地域密着がさらに進展したことです。
――コア層である従来からのベイスターズファンにも、何かアプローチしたのでしょうか?
池田 コア層は自ら情報を入手して弱かったチームが強くなっていく過程を応援してくださっているため、この層に対しては特別のマーケティングを必要としていません。問われるのはチームの成長であり、ホスピタリティや球場の雰囲気であり、ショーなどを取り入れたこともあって満足度が高まり、リピート率が上がりました。コア層では年に10回以上来場される方が増え、大きなイベントのある試合のチケットは1カ月前でないと入手できない状況になりました。チケットの枯渇感が醸成され、当日券のビジネスモデルから前売り券のモデルへと変化しました。