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今枝昌宏「ビジネスモデル考」(11月18日)

ストーリーとしての経営戦略は、なぜ重要?成功モデルに共通する3つの「筋」

文=今枝昌宏/エミネントLLC代表パートナー

●どのような筋があるのか?

 このように筋ないしストーリーとしての戦略が、敵に勝ち、収益を上げるために極めて重要だということは明白なのだが、筋として考えるべき対象はどのようなものか?

 数々のビジネスモデルに内在する筋を追ってみると、大きく3つの主要な筋があるように思われる

(1)まず、顧客や案件の流入に関するプロセスであり、企業が顧客と出会い、顧客と取引を開始し、顧客を自社から離れられなくしていくプロセス、あるいは案件が確実に流入して取引として成立していくプロセスである。これらは、売り上げの前段にあるプロセスということができるだろう。これらのプロセスは企業の財務分析からは決して見えてこないプロセスなのだが、現実のビジネスでは極めて重要なものである。このプロセスをつくり込まないと、せっかくよい価値を提供しようとしても顧客に出会うことができず、価値創造に至らない。

 拙著『ビジネスモデルの教科書』(東洋経済新報社)に出てくるビジネスモデルでいうと、「フリー」「レーザーブレード」「顧客ライフサイクルマネジメント」などにおける主たるストーリーは、このプロセスに関するものである。このプロセスの前段はオープンであるが、できるだけつくり込まれ、最後にはトラップ構造(顧客を獲得するための仕掛け)があるべきである。

(2)次に、経営資源を選んで投資し、経営資源の使い方や業務活動の方法を独特な価値提供に結び付け、顧客に満足をもたらし財務価値に転換していく因果である。バランスト・スコアカードで用いられる「戦略マップ」なども同様の考え方を基礎としている。このプロセスは、事業体が競争優位性を発揮し、収益を獲得していく上で根幹をなすロジックであり、同書では各ビジネスモデルに付した「ビジネスモデルキャンバス」の表に矢印を付して示し、「価値創造過程」として解説した。

 この因果は、基本的に投資から資産取得、売り上げ、活動、費用発生、利益回収という資本主義の投資回収のプロセスに沿って描かれるが、多くの場合その内部に循環を内包していて自己再強化的な因果が成立している。

今枝昌宏

今枝昌宏

エミネンスLLC代表パートナー。京都大学大学院法学研究科、エモリー大学ビジネススクールMBA課程卒業。ジャパンエナジー(現JX)、PwCなどのコンサルティングファーム、買収ファンドであるRHJI(旧リップルウッド)などでの勤務経験を持つ。著書に『ビジネスモデルの教科書』『サービスの経営学』など、訳書に『戦略立案ハンドブック』(いずれも東洋経済新報社)がある。ご連絡は、imaeda@eminent-partners.com まで。

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