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山田修「展望!ビジネス戦略」(12月5日)

ベネッセ、危機は本当か?流出事故で「血の入れ替え」加速、人員削減の裏に「攻めの戦略」

文=山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役
ベネッセ、危機は本当か?流出事故で「血の入れ替え」加速、人員削減の裏に「攻めの戦略」の画像1ベネッセコーポレーション東京本社(「Wikipedia」より/Lim0)

 ベネッセホールディングス(HD)は2日、希望退職者約300人を募ると発表した。同社としては希望退職者募集は初。原田泳幸会長兼社長は「改革スピードを速めるしかない」と判断したとされる。

 今回の決断は7月に発覚した会員情報流出事件の結果だ。原田氏が現職に着任したのが6月21日で、その直後に事件が発覚。同社を揺るがせる経営問題に発展した。

「進研ゼミ」「こどもちゃれんじ」などの通信講座の10月時点の国内会員数は、1年前より7.1%(約25万人)少ない325万人まで減少し、情報流出が発覚した7月から9月までの新規会員は前年同期に比べて6割減った。

 一連の影響を受け、10月31日に発表された2015年3月期の連結最終損益では10~90億円の赤字(前期は199億円の黒字)になる見通しとなった。最終赤字は1995年の上場以来初めて。会員情報流出事件への対応費用のほか、約50億円の構造改革費用を計上する。売上高は前期比で微増の4670億円、営業利益は22%減の280億円を見込む。

 原田氏は12月2日の会見で「余剰人員があることは就任前からわかっていた。ゆるやかに経営を変革しようと考えていたが、事件があった以上、スピードを加速するしかない」と語ったが、この言葉から、事件を逆手に取った原田氏の“修羅場くぐり経営者”としての辣腕がうかがえる。

 今回の発表では、人員削減という「守りの戦略」というべき施策のほかに、実は「攻めの戦略」がいくつも明らかにされた。まず、執行役員クラスで8~9人を外部から迎えるとしている。さらにグループ各社から700人を介護子会社、ベネッセスタイルケアや全国500カ所に設ける学習相談スペース「エリアベネッセ」などに15年3月末までに移す配置転換も行う。経営幹部を入れ替え、人員は減らし、事業をまたぐ人員の再配置も大幅に行う。まさに「血の入れ替え」というべき荒療治だ。

●災い転じて好機と成すか

 今回の施策について、「原田社長はこれまでの手法をベネッセにも持ち込んで難局を乗り切ろうとするが、外部人材登用などは生え抜きからの反発も考えられる。手法が通用するとは限らない」(12月2日付日本経済新聞より)との見方もあるが、これだけの改革を行って内部から反発がないはずがない。そんなことを気にしていたら修羅場の社長は立ちゆかない。

山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役

山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役

経営コンサルタント、MBA経営代表取締役。20年以上にわたり外資4社及び日系2社で社長を歴任。業態・規模にかかわらず、不調業績をすべて回復させ「企業再生経営者」と評される。実践的な経営戦略の立案指導が専門。「戦略カードとシナリオ・ライティング」で各自が戦略を創る「経営者ブートキャンプ第12期」が10月より開講。1949年生まれ。学習院大学修士。米国サンダーバードMBA、元同校准教授・日本同窓会長。法政大学博士課程(経営学)。国際経営戦略研究学会員。著書に 『本当に使える戦略の立て方 5つのステップ』、『本当に使える経営戦略・使えない経営戦略』(共にぱる出版)、『あなたの会社は部長がつぶす!』(フォレスト出版)、『MBA社長の実践 社会人勉強心得帖』(プレジデント社)、『MBA社長の「ロジカル・マネジメント」-私の方法』(講談社)ほか多数。
有限会社MBA経営 公式サイト
山田修の戦略ブログ

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