昨年12月に売り出した第1弾は、今年5月末までの6カ月間に1400万食を売る大ヒット商品となったが、同社の業績改善の立役者となっただけではない。ライバルであるゼンショーホールディングス傘下のすき家の店舗を閉鎖に追い込むという思いがけない副作用をもたらした。吉野家は2度目の「牛すき鍋」効果を狙う。
吉野家は昨年12月5日、「牛すき鍋膳」「牛チゲ鍋膳」を全国発売した。「牛すき鍋膳」は吉野家の牛丼の源流といえるもので、牛肉や野菜、豆腐などを甘口タレで煮込んだものだ。吉野家として初となる、火のついたコンロに鍋をのせて出す商品だ。牛丼といえば急いで食べるというイメージがあるが、早さ重視の牛丼チェーンでは初の試みだった。並盛590円と通常の牛丼より300円も高かったが、家族連れなどの幅広い層から好評だったという。
13年12月の既存店売上高は前年同月比16.0%増となった。「牛すき鍋膳」の効果で14年1~3月の既存店売上高は連続して前年同月比2ケタ増を記録した。これにより同社の業績は好転。14年2月期の連結売上高は前期比5%増の1734億円、営業利益は16%増の21億円と、減益予想から一転して2ケタの増益となった。
4月の消費増税後、既存店売上高はマイナスに転じた。中でも客数の減少が大きく、冬場の人気メニュー「牛すき鍋膳」の投入で客の呼び戻しを図る。15年2月期連結決算は売上高が0.9%増の1750億円、営業利益は51.4%増の33億円と増収増益の予想を立てている。
第1弾で既存店売上高は2ケタの伸びを記録したが、第2弾が同じような伸びを達成するのは至難の業だ。11月の既存店の売上高と客数が「牛すき鍋膳」効果を占う試金石となっていたが、前年同月比19.5%増と大幅に伸び4カ月連続のプラスとなった。ゆっくりと食事をしたい高齢者や女性客を呼び込んだようだ。ちなみにすき家は同1.4%増となり7カ月連続で前年実績を上回り、松屋フーズの「松屋」は同0.9%減だった。
●すき家、店舗閉鎖と初の営業赤字に
吉野家とは対照的に、すき家は「牛すき鍋」に足元をすくわれた。吉野家の成功を受けて、すき家はすき焼きを約10年ぶりに復活させ、今年2月14日からすき焼きをメインに据えた鍋商品3商品の全国販売を始めた。