テンプHDはM&A(合併・買収)に積極的だ。13年4月に求人広告などを手掛ける人材サービス大手インテリジェンスを、米投資ファンドKKRから510億円で買収した。2000億円台だった売上高は、インテリジェンス買収の効果で14年3月期には前期比47%増の3624億円、営業利益は89%増の185億円と大きく伸びた。
15年3月期も引き続き好調で、売上高は前期比9%増の3965億円、営業利益は24%増の230億円と過去最高を連続更新する。雇用の改善で、事務系を中心に人材派遣部門が堅調だった。人材派遣は全社売り上げの7割近くを占める中核事業で、15年3月期の売上高は8%増の2716億円、営業利益は13%増の127億円の見込み。金融、自動車など幅広い業種で需要が増えた。
買収したインテリジェンスのアルバイト・パート求人サービス「an」の売り上げは15%増の210億円、転職サービス「DODA」は13%増の322億円と2ケタの伸びを予想している。この勢いに乗り、17年3月期の全社の売上高は5000億円、営業利益は300億円と高い目標を掲げる。5000億円の大台達成は、ひとえにM&Aの成果にかかる。
●「山から下りる」パナソニック
エクセルは1989年、パナソニックの100%出資の人材派遣会社として設立された。当初はパナソニックグループへの技術者や事務職の派遣が主力だったが、グループ以外の業界にも手を広げた。派遣の登録者数は31万人を擁し、14年3月期の売上高は前期比1.5%増の640億円だった。
現在パナソニックは構造改革を推進中。津賀一宏社長は11月7日付日本経済新聞の取材で「登る山は住宅と自動車。電機業界が得意にしてきた山には登らない。アジアで安くて高品質の住宅を大量に供給する。自動車はティアワン(完成車メーカーの1次取引先)を目指す」と語っている。
パナソニックは自前主義ですべてを抱え込むのではなく、外部に委託できる事業は切り離していった。中核でない事業は売却を進め、「山から下りる」ことを決断したのだ。
テンプHDはこれまで、そのパナソニックが「下りた山」の受け皿となってきた。13年1月、パナソニックは子会社2社をテンプHDに売却。デジタルAV商品のソフト・ハードウェア設計開発のパナソニックAVCテクノロジーと、モバイルクラウド関連のソフトウェア、システム開発のパナソニックAVCマルチメディアソフトである。テンプHDは2社の66.6%の株式を16億6500万円で取得。異業種を買収した目的を、商品開発力・技術開発力を誇る2社を通して、顧客企業に対するソリューション(請負・特定派遣)の拡充や求職者(技術者)の募集につなげると説明した。両社が加わり、受託開発サービス部門の15年3月期の売り上げは231億円を見込む。