●世界の和食ブームに乗り海外進出にも積極的
和食がユネスコの無形文化遺産に登録されてから1年。海外での和食に対する関心と評価は確実に高まっている。この数年、日本酒の輸出が増え認知度も上がってきている。国税庁の統計によると、酒類の輸出金額(13年)は251億円で10年前の2.3倍になった。なかでも日本酒は03年の39億円から2.7倍の105億円に増え、人気ぶりがうかがえる。梅酒を含むリキュールも13年の輸出額は25億4500万円で、規模では日本酒の4分の1程度だが、前年比24%増と好調だ。昨年、NHK連続テレビ小説『マッサン』の影響もありブームとなっているウイスキーも輸出額39億8000万円で前年比60%増と大きく伸びている。
当然、梅酒業界は海外市場でのさらなる需要拡大を狙っている。中野BCの中野幸治副社長は次のように語る。
「日本食に対する評価が高まる中、海外市場では日本酒の需要が上がっていますが、梅酒に関しても需要拡大の可能性があると考えています。フランス料理などでは最後にデザートワインのように甘いワインを楽しむ文化がありますし、南国では甘いリキュールを飲みます。弊社としても現在、フランス、アメリカ、アジア圏などを訪問し、市場視察、展示会参加、和歌山県とのプロモーション活動などに積極的に取り組んでいます。展示会などでは、梅酒はとても高い評価をいただいています。海外では梅と似た果実がなかなかないので、その認知度を上げながらワインに代わる商品として展開できると考えています」
同社はユニークな取り組みも行っている。昨年6月、香港のショッピングモールで酒蔵の管理者である梅酒杜氏による梅酒の漬け込みセミナーを実施したのだ。梅酒コンテストで日本一に輝いた「紅南高」を生み出した造り手・山本佳昭氏(中野BC梅酒杜氏)を講師に、収穫したての南高梅と日本の焼酎、氷砂糖を使い伝統的な仕込み方法や、おいしく作るコツ、その科学的解説、梅酒を使ったカクテルのレシピなど梅酒の魅力を伝授した。参加した40代の女性は「梅酒を10年間漬けてきたがヘタを事前に取り除くことなど、初めて正しい方法を学びました」と述べ、満足した様子だったという。
香港はここ数年来、日本の農林水産物最大の輸出相手国である。リキュールの輸出先としても台湾に次いで2位となっている。中野BCは12年から輸出を強化し、香港で開催されるアジア最大級の食品見本市への出展、試飲会イベントなどを開催してきている。今後は香港を中心にアメリカ、シンガポール、オーストラリアなどへの輸出を強化し、市場拡大を図っていくという。