実質賃金、20年前と変わらず 一億総“お金使わない”現象を生んだ日本の特殊性と原因
ここ数年、若者のアルコール離れが叫ばれていますが、その実態は「若者の」ではなく「働き盛りの」のようです。
「国民健康・栄養調査」(厚生労働省)によると、飲酒習慣率(週3日以上、1日1合以上飲酒する人の割合)を2003年と12年で比較すると、男性全体では37.4%だったのが34.0%と下がっています(各年代別データは以下のとおり)。
・20代:20.2%→14.2%
・30代:35.6%→30.8%
・40代:48.5%→37.3%
・50代:50.0%→45.3%
・60代:41.0%→44.2%
・70代:24.0%→25.0%
上記で注目されるのは、60~70代で数値が上がっている点で、「長く働いてきたんだから、酒くらい自由に飲ませてよ」といった声が聞こえてきそうです。ちなみに、女性は20代と30代でやはり下がっているものの、40~70代では上がっています。女性が元気になってきた証左なのでしょうか。
前回連載記事『なぜ日本人は“異常に”お金を使わない?ひたすら貯蓄するワケ データと感情面より考察』では、金融資産の多くを保有している高齢者は、いざという時のために備えておきたいという思いが強いがゆえにお金の循環が生まれないのではないか、と推測しました。それでも過去の日本では、あまり先のことを心配せずに多くの国民がお金を使った時代もありました。
ある程度の大人になったら性格が変わらないのと同様に、成熟市場でもある日本の国民性が変わることは当面ありえないでしょう。ただ、そうした国民性でも、バブル景気という歴史の存在が示すように、一定の条件が整えば皆お金を使います。資産や給与が上がり続けていくと誰もが信じられれば、財布の紐も緩むのでしょう。今はその逆で、日経平均株価が上がろうとも、資産や収入が上がっていくどころか年金のみでは生活できない、貯金も足りないと思っている人のほうが多い状態です。
日本証券業協会が12年に行った調査では、国内株式を保有している人の割合は11.2%となっていました。そのうち57.8%は金融資産の合計額が300万円未満です。300万円未満であろうとも、ある程度お金に余裕がある層ともいえるでしょう。その層の人にしてみても、日経平均株価が12年時点の9000円前後から現在の1万6000~7000円になる過程で金融資産を倍増させたとしても、増額分は300万円未満です。将来の不安を取り除いて消費が上向くインパクトはありません。ただ、一朝一夕で貯蓄が増えることはありませんが、老後の収入の期待値が高まれば(生活コストを上回ることが実感できれば)、将来不安が今よりは軽減されることでしょう。