(「Thinkstock」より)
鉄鋼業界は2002年、川崎製鐵とNKK(旧・日本鋼管)の経営統合でJFEホールディングスが誕生。前後して新日本製鐵、住友金属工業、神戸製鋼所が資本提携した。日産自動車の鋼材調達先の絞り込みに加え、ミタルが日本の高炉の買収を仕掛けるのではないかとの思惑から再編の気運が高まった。
ここ10年間で、世界の鉄鋼地図は大きく塗り変わった。現在、中国には大小合わせて800社近い鉄鋼メーカーが存在すると言われている。中国政府は、製鉄所の整理・統合を通じ、将来は200社にまで削減する方針。政治主導の合併で、世界の粗鋼生産ランキングの上位を中国勢が独占するようになった。
11年(暦年)の粗鋼生産量は、ルクセンブルグのアルセロール・ミタルが9720万トンでトップ。2位は河北鋼鉄集団の4440万トン、3位が宝鋼集団の4330万トン。上位10社のうち6社が中国勢だった。
日本の新日鐵は3340万トンで6位、JFEスチールが2980万トンで9位。日本勢は4位の韓国ポスコ(3910万トン)にも水を空けられている。新日鐵が27位の住金(1270万トン)との合併で4610万トンとなり、2位に浮上したが、宝鋼集団は今年5月、年間1000万トン級の巨大製鉄所の建設を始めた。中国政府が一段と鉄鋼再編を進める構えで、新日鐵住金が2位を死守するのは簡単ではなさそうだ。
アジアでは中国や韓国勢による巨大な製鉄所の建設計画が目白押しだ。韓国ポスコがインドネシアで13年に高炉の完成を目指している。国内勢もJFEスチールがベトナムで台湾企業との合弁で16年中の生産開始を予定している。
11年の世界粗鋼生産量は15億トンだが、数年後にはアジアで新たに年間1億トン近く供給量が増える。増加する分だけで日本国内で11年に生産した数量に匹敵する。
中国国内で余った鋼材がアジア市場に安値で投げ売りされているため、鋼材の国際的価格は低迷している。さらに生産能力が増えればサドン・デスの戦いとなる。