現在、銀行の貸出の伸びは思わしくない。日本銀行の金融緩和で長期金利は急降下しており、運用難は明らかだ。ではなぜ預金を集めるのか。将来の預金減少への危機感があるからだ。三大都市圏以外では10年代後半に預金の絶対額が減り始めるという予測がある。収益の源泉である預金が目減りしないようにするために、インターネット支店で高利を売りに金を集めているのだ。
●鹿児島銀行、沖縄県の市場調査着手
沖縄県の金融業界は、これまで沖縄銀行(那覇市)、琉球銀行(同)と沖縄海邦銀行(同)ですみ分けができており、九州金融業界の競争の圏外にあると思われてきた。ところが肥後銀行と経営統合する鹿児島銀行が沖縄県での支店開設を検討するため、現地に行員を派遣して市場調査を始めた。支店開設について機関決定はしていないが、もし実現すれば、沖縄県外の地銀の支店開設は戦後初めてとなる。
現在の人口は鹿児島県が166万人で沖縄県は142万人だが、35年には逆転し、その差はさらに広がる可能性も指摘されている。つまり、沖縄県は鹿児島県より大きな金融マーケットになる可能性があるのだ。現在、沖縄県にはみずほ銀行の支店と三菱東京UFJ銀行の支社があるが、地方銀行・第2地方銀行とも進出していない。83年に鹿児島銀行の前身・第百四十七国立銀行が沖縄支店を開設し、65年から86年までは沖縄事務所があったが、撤退した。鹿児島銀行の動きを、南九州の地銀、第2地銀は凝視している。
●挟撃された横浜銀行
横浜銀行が再編に動いたのは、メガバンクと千葉銀行を筆頭とする他地域の地銀に挟撃されているからだ。横浜市に本社を置く中堅・中小企業は積極的にアジアに進出しているが、海外網が強力な三菱東京UFJ銀行などのメガバンクとの情報戦で横浜銀は苦戦している。大手銀行だけではない。四国・徳島の阿波銀行までが13年夏に横浜に拠点をつくった。地銀の囲い込みの主導権は千葉銀が握っており、横浜銀行がどう巻き返すかに関心が集まる。
●金融庁、立ち入り検査再開
金融庁は地方銀行の経営統合を支援するため、グループ間で余った資金を自由に融通できるよう14年12月から規制を緩和した。これまでは、余剰資金を同じグループの一つの銀行に集めて一元運用すると、「自己資本の25%まで」とする規制に抵触する懸念があった。昨年12月1日から、経営効率化の目的にかなうことを条件に、銀行間の大口資金の移動を自由に認めるようにした。
この規制緩和により、資金需要が旺盛な都市部の銀行を傘下に持つメリットが大きくなる。金融庁は15年前半に地域金融機関に対する立ち入り検査を再開する。地方銀行の監視体制を抜本的に改めてからの初めての検査となる。特定のリスクに焦点を当てた検査を行う予定という。
この検査で新しいリスクをあぶり出された地銀、第2地銀が再編の生贄になるとの見方も浮上している。「あくまで統合・合併は手段」(田口幸雄・岩手銀行頭取)という平和な時代は去り、地銀業界には容赦ない再編の波が押し寄せている。
(文=編集部)