USJはハリウッド映画の大手、ユニバーサル・スタジオが設立を手がけているが、『ハリー・ポッター』はワーナー・ブラザース、『進撃の巨人』は講談社など、『妖怪ウォッチ』はレベルファイブに権利があり、フラッグシップブランド化は困難だ。ミッキーとミニーに季節ごとのイベントをかけ合わせて集客を図り、グッズ販売ができるTDRとの差は大きい。
独り善がりな戦略で周辺ホテルはガラガラ?
「わかりやすくいえば、TDRはディズニーの世界観を楽しむリゾート、USJは複数の映画が並ぶシネマコンプレックスでしょう。この違いが価格戦略にも表れています。年間パスポート(年パス)の価格戦略が対照的です。TDRの年間パスポート(どちらか1パーク)は大人5万9000円で、1日利用券は6900円ですから、9回来ないと元が取れません。一方、USJのユニバーサル年間パスは1万9800円。1日利用券は7200円ですから、3回で元が取れます。一見、USJのほうがお得で、USJ側も客単価が短期的には上がりますが、1年に3回来れば十分な内容だとUSJが自ら公言しているようなものです」(同)
TDRは、その世界観を堪能するために年に数十回と訪れる年パスユーザーも多い。彼らが来園するたびに購入するグッズや飲食の売り上げも、TDRの業績に大きく貢献しているのだ。
「TDRは出入り自由のリゾートとしてその周辺のオフィシャル、提携ホテルとの連携も充実させるなど、オープン戦略を取っています。一方、USJは『再入場不可』に見られるように、事実上パーク内ですべての消費を強制しています。私は先日、USJに行った際、周辺のホテルに泊まりましたが、高層階の眺望のいいレストランで夜の時間にもかかわらず、客は私のほかに1カップルしかいませんでした。このように、周辺のホテルとの連携もうまくいっていないのです。USJのホームページを見ても、周辺のホテルの案内にたどり着くまでが大変です。自分たちの売り上げが上がればいいという独り善がりな戦略では、早晩行き詰まるのではないでしょうか」(同)
TDRは自社の土地、USJは大阪市や企業からの借地となっているために、思ったような開発、展開ができないという面もありそうだ。制約が多い中でUSJは次にどのような手を打つのか、注目が集まる。
(文=小石川シンイチ)