こうした状況を見ると、ドコモは販売力や商品力でAndroid端末を押し上げたわけではなく、安売りした結果として一時的に販売台数を伸ばした端末があっただけということがわかる。台数ベースの勝負ならそれでよいかもしれないが、売り上げベースでみると、au、ソフトバンクとの差は拡大するのではないだろうか。
iPhone一強の傾向が強まる
ビジネスでもスマートフォンを活用する例は多いが、最近、従業員の私物端末を業務で使用する「BYOD(Bring your own device)」を本格的に導入する企業が増えてきた。それでも、どんな端末でもOKとする企業は多くない。
最も一般的なのは、サポートやセキュリティ対策のために対応機種を限定する方法だ。多くのユーザーが持っており、対応ソリューションも多く管理しやすいことから、「iOS搭載端末(iPhone)に絞る」という決断が行われやすい。
ドコモがiPhoneを扱う前は、家族割など料金プランの関係でキャリア変更を望まない従業員から苦情が出ていたようだが、どのキャリアでもiPhoneを購入できるようになったことで、対応端末をiPhoneに絞ったBYODがやりやすくなったという声が上がっている。
この話からは2つのことが考えられる。
まず、企業がコスト削減のためにBYODを導入することで、iPhoneを所有する人が増える可能性がある。iPhoneでなければ仕事で使わせてもらえないとなれば、これまでフィーチャーフォン(ガラケー)やAndroid端末を使用していた人がiPhoneに乗り換えるきっかけになるだろう。
もう1つは、企業がBYODを導入しても、料金プランを理由にキャリア変更を嫌うユーザーがある程度いたということだ。しかし、iPhoneが非常に強い状態を保っており、一方でAndroid端末の売れ行きが減退している今、家族揃ってiPhoneに乗り換えるケースも出てくるだろう。そうなると、家族割などで顧客をつなぎ留めていられる期間は、あまり長くなさそうだ。
ドコモは長年の取り組みの結果として、山間部等を含めた利用エリアの広さを売りにしてきたが、最近ではその優位性も目立たない。その上、iPhoneの本体価格を値上げするなど、ユーザー離れを加速させそうな動きも見せている。
安売りのAndroid端末でしか戦えていないドコモが、iPhoneを値上げする意図はどこにあるのか。果たして巻き返しの妙案があるのか、このまま沈んでいくのか、ドコモの動向から目が離せない。
(文=編集部)