また、監理銘柄の指定を解除されても、内部管理体制に改善の必要があると東証が判断すれば、「特設注意市場銘柄」に指定される。1年以内に内部管理体制確認書の提出が求められ、その内容が不十分なら上場廃止になるわけだ。
東芝が越えなければならない高いハードルがいくつもあり、経過の報道があるたびに株価は波乱を起こす懸念もある。
現・旧経営陣の責任問題
今回の不適切会計について東芝が詳細説明や情報公開をしないことに対し批判が高まる中、発表から1週間が経過した5月15日、ようやく田中久雄社長が記者会見を行った。田中氏は「内部統制が必ずしも完全に機能していなかった」と語り、意図的な不正や会計操作があったかどうかという点については「第三者委が調査する」と述べるにとどめた。
不正が行われた金額が拡大する懸念が強まっており、有価証券報告書の提出期限である6月末までに決算を発表できるかどうかの「メドは立っていない」(田中氏)。6月下旬の株主総会で例年、決算が報告されているが、上旬までに発送される株主総会の招集通知に決算掲載を間に合わせるのは困難だ。「まず株主に調査の経緯を報告した後、調査終了後に正式な株主総会を開くことになるのではないか」(東芝関係者)との見通しも出ている。
すでに発表された第三者委のメンバーは、元東京高等検察庁検事長の上田広一弁護士が委員長に据えられ、委員は松井秀樹弁護士と伊藤大義公認会計士(元日本公認会計士協会副会長)、山田和保公認会計士。第三者委はすべての部門と海外を含む連結子会社を対象に調べる。
田中社長は「内部調査の過程で、インフラ以外に疑義がうかがえる点が出た」ことを明らかにしており、不適切な会計処理の範囲や金額が、500億円より膨らむ可能性がある。田中氏のほか、これまでの経営トップも第三者委の調査対象になるとみられており、現経営陣や過去の経営トップの責任問題に発展することも十分にあり得る。
東芝の“焦り”
不適切会計発覚のきっかけは、関係者による証券取引等監視委員会への内部通報だったことがすでに判明している。
「08年のリーマン・ショックによる業績落ち込みからの回復で、ライバルの日立製作所や三菱重工業に遅れを取り、その焦りから社内でのノルマが厳しくなっていたことも、今回の事件の底流にある」(東芝関係者)
田中氏は15日の記者会見で、過去の決算で営業損益減額修正の必要が生じた工事は9件あり、その大半は国内案件だと説明した。判明したのは社内カンパニーの電力システム社で4件(約60億円)、社会インフラシステム社で4件(約300億円)、コミュニティ・ソリューション社で1件(約140億円)となっている。
「粉飾決算が発覚する可能性もあり、そうなれば東芝の経営は大きく揺らぐ事態に発展する」(市場筋)ともいわれる中、予断を許さない状況が続く。
(文=編集部)