ヘッジファンドは暴力団?違法すれすれ、話を誇張、実は弱いので気にしなくてよい…
現在、日本の株式市場の売買シェアの6割は外国人投資家が握り、アベノミクス相場で10兆円を買い越した。その中心にいたのが、ヘッジファンドだ。
「5月23日の日本株急落以降、アベノミクスに対する海外投資家の熱は冷めたかに見えたが、決してそうではない。今回、パルナッソス・インベストメント・ストラテジーズと組んで、大手ヘッジファンドを中心とした海外の機関投資家に対し、緊急アンケートを実施したところ、参院選後の日本株はまだ『買い』かという問いで、『いいえ』と回答したのはわずか3%、大半は『買い』、または条件付きの『買い』と答えた」。これからもヘッジファンドは日本株で相場をつくり続けるだろう。
●国家予算の倍という巨大な市場規模
ヘッジファンドの市場規模は、日本の国家予算の倍に相当する200兆円近くに達し、過去、幾度となく世界を動かしてきた。しかし、その実態はよく知られていない。「謎に包まれた彼らの戦略を解明するとともに、米国の金融緩和策の縮小後、いかなる相場を見込んでいるのか、徹底取材した」特集だ。
特集パート1「ヘッジファンドは知っている」では、ヘッジファンドが金融市場でこれからどう動くか、緊急アンケートも行っている。
アンケートでは、日本株上昇への期待度は高いものの、リスク要因に関して、この秋の「安倍政権の成長戦略第2弾が不発に終わった場合」や、9月とも予想される「米国のQE3と称される金融緩和策の縮小開始」が挙げられた。欧州債務問題の再燃や、中国シャドーバンキングのリスクも高まっている。世界の市場が大きな転換点を迎えており、ヘッジファンドにとっても、大きな相場が再来しそうなのだ。
なお、緊急アンケートの回答をまとめた完全版は、最近、本格的にスタートした読者限定プレミアムサイト「デイリー・ダイヤモンド」で、雑誌に掲載された記事番号を入力することで閲覧可能になっているという。
特集パート2「ヘッジファンドの正体」では、ヘッジファンドの運用戦略を掘り下げている。「市場の攪乱分子」「バランサー」「山師」「堅実家」……人によって、時に正反対の評価がなされるヘッジファンドの運用に迫った。「戦略は千差万別。相場の得手不得手がシェアを左右する」というのが、大まかな結論だ。特集の「異端エリート和製ヘッジファンド全相関図」では、和製ヘッジファンドの相関関係が描かれており、今後役に立つ資料になるかもしれない。
特集パート3「外国人投資家に学ぶ最新投資術」では、海外の年金基金や大学基金、ヘッジファンドといったプロの投資家が、5月23日の日本株急落以降、どのように投資戦略を変えたのかを分析している。
今回の特集に関しては、ダイヤモンドオンライン「山崎元のマルチスコープ」【第290回】「『ヘッジファンド特集』を個人投資家はどう読むべきか」(http://diamond.jp/articles/-/39523)で、経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員・山崎元氏によって、タイムリーで冷静な解説がなされている。山崎氏は消費者寄りの解説で定評を得ているが、今回も「話が大きくなり易いバイアスがかかるヘッジファンドの虚像を過大評価するな」と警鐘を鳴らす。
●ヘッジファンドは暴力団みたいなもの
氏は「ヘッジファンドのビジネスは『暴力団』と似たところがある」という。どういうことか。
「その勢力が大きいとか、あるいはその行動手口が法律スレスレの大胆なものであるとか、顧客筋に『常軌を逸した凄さのイメージ』を売り込むことによって、ヘッジファンドは商品価値が増し、ヘッジファンドに運用を頼みたいと思う顧客が増える仕掛けがある。
また、ヘッジファンドが『凄い』ことが好都合なのは、暴力団を取り締まる仕事をする人々や、暴力団を題材にした記事などを報じる著述家や媒体にとって、暴力団が『凄い』とのイメージが大きくなることが、ビジネス上好都合なのともよく似ている。
何が言いたいかというと、ヘッジファンドに関する報道には、そもそも話が大きくなりやすいバイアスがあるということだ」とダイヤモンド誌にピリ辛だ。
また、「ヘッジファンドが、資金量の意味でもメディア露出の上でも、『目立つ』投資主体であることは間違いないのだが、彼らはマーケットの『流れ』をつくっているのではない。――借金によって投資している『弱い投資家』にすぎない」「金融機関は、ヘッジファンドの運用に『プレミアム感』を演出し、顧客の『飢餓感』を煽ろうとするだろうが――個人客まで相手にするようになると、よほど機関投資家の間で不人気になったということ」すなわち、「個人投資家は、2つの意味でヘッジファンドを気にしなくていい」と結論付ける。
山崎氏は、この3月までダイヤモンド本誌で長期間の連載を持っていたが、それが終了させられたことの憂さもあるのだろうか、今回の特集を斬って捨てているのだ。
しかし、オンラインであるからこそ、こうしたタイムリーな検証もできるため、読者にとっては大歓迎だ。ダイヤモンド編集部としては、期せずして、かもしれないが、ネットと本誌のやりとりで、特集の内容が深く理解できることになった。
最後に、ダイヤモンドはこれまでの「ダイヤモンドオンライン」に加えて、読者限定プレミアムサイト「デイリー・ダイヤモンド」を立ち上げたために2つサイトができてしまい、読者にとっては混乱の元になりつつあるのではないだろうか。
(松井克明/CFP)