“巨大市場”のサプリ・トクホ食品のウソ~効果を誇張、不必要な商品を煽る誇大広告が蔓延
今やサプリ、トクホを含む健康食品の市場規模は1兆7000億円以上だ。今年に入ってからもトクホはヒットを連発。花王が4月に発売した、トクホ缶コーヒー「ヘルシアコーヒー」が10月末までに約216万ケース売れるヒット商品となっている。10月に販売を開始したサントリー食品インターナショナルのトクホ商品「伊右衛門 特茶」も「体脂肪を減らす」というキャッチコピーで、発売から2週間で年間販売目標の100万ケースを突破する勢いだ。
ただし、トクホ商品にはウラがある。トクホは国の制度によって個別製品ごとに審査して消費者庁から許可されたものだが、パッケージに表示できる機能の内容も許可が必要であり、制約がある。その分、広告でイメージを増長させる仕掛けを使うのだ。
例えば、「伊右衛門 特茶」も「体脂肪を減らす」というキャッチコピーだが、正式に許可を受けた表示内容は「脂肪分解酵素を活性化させるケルセチン配糖体の働きにより、体脂肪を減らすのを助けるので、体脂肪が気になる方に適しています」というものだ。臨床実験の効果も、実際に減るのは「腹部全脂肪面積のわずか1.8%」にすぎない。
それにもかかわらず、健康志向を追い風にして消費者庁お墨付きの「トクホ」というブランド効果に「体脂肪を減らす」というキャッチコピーがヒットを呼んだというわけだ(特集記事『健康食品 広告の嘘と本当』)。
●サプリの効果・効能表示の規制緩和で市場拡大か?
今回の特集の中心はサプリ。サプリは、トクホと異なり、特別な許可も届け出もいらない。錠剤やカプセル、粉末など医薬品を連想させるものを「サプリ」と呼ぶ風潮があるものの、明確な定義はない。ここにきてサプリが注目を浴びるのは、いわゆる健康食品の表示規制緩和が政府の成長戦略で決まったからだ。14年度にも解禁される「効果・効能表示制度」は、サプリ大国・米国の制度を参考にする方針が有力だ。
米国では1994年に「ある程度の科学的な裏付けのある成分については、メーカーの責任において、『人体の特定の部位に影響を与える』という構造・機能強調表示が幅広く行えるようになった。これを機に、健康食品市場は4倍に急拡大。現在では日本の2倍近くに当たる約3兆2000億円にまで成長している」という。
例えば、これまでは効果・効能をうたえたのはビタミン12種、ミネラル5種の17種類だけで、コエンザイムQ10などは、「活力ある毎日をサポート」程度の表現しかできなかったが、表示規制緩和後は「健康的な心臓機能のサポートに役立ちます。細胞エネルギー産生に不可欠」などと身体の部位を挙げて、機能をはっきりと打ち出すことができるようになるのだ。
日本でも健康食品の表示規制緩和が行われれば、商品の陳列などを得意とするドラッグストアにも勝機が出てくる。現在ドラッグストアの販売は約2000億円だが、業界では「ドラッグストアの売上高は10倍の2兆円になるのではないか」と皮算用をしているほどだ(特集記事『規制緩和で動き出す2兆円市場』)。
規制緩和によってますますサプリが身近になり、口にする機会が増えるかもしれないが、摂取するにも優先順位があるということを知っておきたい。人類共通に不足しがちなのはビタミン12種、ミネラル5種の17種類だ。現代の加工食品では製造工程でビタミンやミネラルが抜け落ちがちだからだ。次に「日本人の食生活に特有で、現代食では不足しがちな成分」が大豆のレシチン、魚のDHA、EPA、そして食物繊維。そして「大半は体内合成されるが、人によって不足しがちな成分」としてコエンザイムQ10や、グルコサミン、コンドロイチンといった、サプリでよく聞かれる成分が並ぶ。ただし、これらは個人差が大きく、必ずしも取らなくてもいいレベルだ(特集記事『あなたにサプリは必要? 不要?』)。
つまり、サプリの表示規制緩和が行われる前の現在でも、必要不可欠なビタミン12種、ミネラル5種の17種類の効果・効能はうたえている。表示規制緩和によって、これからは取る必要のない栄養素の効果・効能がうたいやすくなる、ということになる。
トクホという健康ブランドイメージだけで、買いに走ってしまう日本人。サプリの表示規制が緩和されれば、これまで以上に広告に煽られてサプリ買いが加速してしまうのかもしれない。
(文=松井克明/CFP)