◇居住区域除染に450億円
復興庁の2024年度予算案は前年度比14.8%減の4707億円。東京電力福島第1原発事故を受けた帰還困難区域のうち、「特定帰還居住区域」での除染費用に450億円を計上した。
特定帰還居住区域は、帰還困難区域で先行して除染していた「特定復興再生拠点区域」(復興拠点)外で、住民帰還を目指す区域。既に設定された福島県大熊、双葉両町のほか、今後計画が認定される見込みの地域での除染を想定している。
今年4月に設立された「福島国際研究教育機構」の関連費は154億円。うち施設整備に36億円を充てる。農林水産業のスマート化など本格的な研究の実現可能性を調査する事業などに99億円を確保した。
◇公共事業、微増の6兆828億円
公共事業関係費は、前年度比26億円増の6兆828億円となった。土地利用の規制と組み合わせた治水、津波対策を講じるほか、危険性の高いエリアでの住宅新築支援額を引き下げるなどし、頻発、激甚化する自然災害への対策をハード・ソフト両面で強化する。上下水道の一体的な管理や老朽化対策に取り組む自治体への補助制度も新設する。
国土強靱(きょうじん)化関連は、632億円増の4兆330億円。資材価格や人件費の高騰による工事費用の増額に対応できるよう、補正予算ですでに措置した1兆3000億円と合わせて国や自治体の取り組みを加速させる。
◇整備新幹線に2275億円
整備新幹線の建設事業費は、前年度比335億円増の2275億円。このうち9割に当たる2060億円を2030年度末完成予定の北海道新幹線(新函館北斗―札幌間)に充て、工事を本格化させる。国費は前年度と同じ803億7200万円を確保した。
24年3月に開業する北陸新幹線(金沢―敦賀間)には150億円、西九州新幹線(武雄温泉―長崎間)には64億円、北海道新幹線(新青森―新函館北斗間)には1億円を投じ、騒音対策工事などを進める。経営が厳しいローカル鉄道の再編など地域公共交通の見直し支援には、補正予算も含め532億5900万円を計上した。
◇サイバー特捜部に格上げ=警察庁
警察庁は、サイバー空間の脅威に対処するための予算として49億6200万円を計上した。2022年4月に新設したサイバー特別捜査隊を「特別捜査部」に格上げして、体制を強化する。人員も増やし、部の中に「特別捜査課」と「企画分析課」を置く。高度な人材トレーニングを実施するほか、捜査や解析用資機材の整備を進める。
組織犯罪対策では、34億3100万円を盛り込んだ。特殊詐欺と「匿名・流動型犯罪グループ」対策を担当する長官官房参事官を新設。部門を横断して取り締まりを強化する。
警察基盤の充実には248億7900万円を計上。警察官が身に着けるウエアラブルカメラを地域、警備、交通分野で導入するモデル事業や、人工知能(AI)を使った指紋識別業務の高度化を行う。
◇巡視船、航空機を増強整備=過去最大2611億円―海保
海上保安庁は、尖閣諸島周辺海域での中国公船への対応や、北朝鮮による相次ぐ弾道ミサイルの発射といった情勢を受け、巡視船や航空機などのハード面で大幅な警備体制の強化に取り組む。予算総額は過去最大の2611億円で、前年度予算からは180億円の増額となった。
警備体制強化のため2024年度から大型巡視船5隻を建造するため、129億2000万円を計上した。5隻は27年度に就役予定で、過去の増強計画と合わせ、27年度末までに89隻体制になる見込み。
海洋監視能力の強化に向け、現在3機体制の無人航空機も新たに2機購入し、25年度から5機体制となる。24年度末までに運用拠点を海上自衛隊八戸航空基地(青森県八戸市)から北九州空港に移す予定で、移転費として9億4000万円を盛り込んだ。
◇沖縄振興費、3年連続3000億円割れ
沖縄振興費は、前年度比1億円減の2678億円となった。沖縄県が求めていた3000億円を下回るのは3年連続。
県が使途を自由に決められる一括交付金は、前年度を4億円上回る763億円。物価高騰を踏まえ10年ぶりの増額となった。国が市町村の事業を直接支援する特定事業推進費は、過去最高額に並んだ前年度と同じ85億円を確保した。
経済対策では、観光産業の人手不足に対応するための取り組みに5億円、景観の整備・維持管理を進める事業に2億円を新たに盛り込んだ。支援人材の配置など、子どもの貧困対策には過去最大となる19億円を計上した。
◇OSA予算、2.5倍増=外務省
外務省の2024年度予算案は前年度当初比178億円減の7257億円となった。同志国に防衛装備品を無償供与する枠組み「政府安全保障能力強化支援(OSA)」は2.5倍増の50億円を確保。24年度はベトナム、ジブチを対象国にする。調整を進め、さらに対象国を増やす。
非軍事分野を対象にする政府開発援助(ODA)は政府全体で5650億円となった。人工知能(AI)を活用した国際情勢分析2.6億円、情報セキュリティー強化76億円を盛り込んだ。日本で開く島しょ国・地域の首脳会議「太平洋・島サミット」開催経費に3.1億円を計上した。
◇戸籍システム整備に385億円=法務省
法務省の2024年度予算案は、前年度当初比2.7%増の8133億3300万円となった。戸籍に氏名の読み仮名を記載して個人データの検索・管理を容易にするシステム整備などに385億8800万円を計上した。
捜査や公判といった刑事手続きのIT化に10億9100万円を充てた。現在は紙媒体で作成・保管している書類を電子化し、オンラインで送受信する仕組みを構築する。
霊感商法への対応強化では325億3600万円を盛り込んだ。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の被害者救済に向け、日本司法支援センター(法テラス)の支援を拡充する。(了)
(記事提供元=時事通信社)
(2023/12/22-18:21)