早期の日銀の追加金融緩和策および規制緩和を掲げる「週刊エコノミスト」のイケイケ感が目立つ年始特大号だが、それよりもさらに時代の先を行こうとしているのが「日経ビジネス」だ。特集では14年に確実に来るトレンドを紹介し、その第1に「働き方の多様化」がもたらすであろうトレンドを紹介しており、「14年は勤務時間などが限定された『ジョブ型正社員』の雇用ルール作りも本格化する」と、規制緩和後のビジネスを予想しているのだが、「“残業の概念がない新種の会社員”の増加もプラスの効果をもたらす可能性が大きい。例えば、居酒屋チェーンで開店時間を前倒しする動きが想定される」とプラス面だけを強調している。
なお「ジョブ型正社員」とは、「限定正社員」ともいわれ、正社員と非正規労働者の中間的な存在だ。「これは欧米型のあくまで特定の仕事に就く形で雇用契約を結ぶもので、雇用維持よりもキャリア形成を優先する働き方だ」「この働き方が普及すれば企業の事業改廃が容易になり、経済活性化が期待できる」(「週刊ダイヤモンド」)
しかし、「ジョブ型正社員」が実現すれば賃金はカットされ、いつでもリストラの恐怖に怯えることになる危険性はないだろうか。
●消費増税でヒットするのは「金投資」?
14年も相変わらず企業目線の「日経ビジネス」が、消費増税で確実にヒットするものとして挙げているのは「金投資」だ。
「金は購入時には消費税を支払うが売却時には個人であっても消費税分を受け取ることが可能。このために仮に金の価格が変わらなければ、3月に消費税込みで105万円で購入した金を4月に売れば、108万円が手に入ることになる(諸経費などを考慮せずに試算)。将来、消費税率が10%に上がれば利益はさらに増える計算」
これは金だけでなく、プラチナや銀などの貴金属にもあてはまるという。
「過去の消費増税の時期でも金投資がブームになってきたのはほかならぬ事実。『1989年4月の消費税導入直前に通常月間25~30トンだった金の輸入量が2月に39トン、3月に41トンと大幅に増加した。消費税が3%から5%になった97年も直前に2倍程度伸びた』」と税金ジャーナリストの声を紹介する。
13年の金市場は一貫して売りで、相場は下がり続け、4~5月の大暴落などもあり、ピーク時の価格の3割ほどにまで急落したこともある。米連邦準備制度理事会の(FRB)の量的緩和策の終息を織り込みつつ、中国やインドなどの現物需要が下支えしてきた。「日本と中国の関係が極度に悪化するような地政学的リスクが生じると『有事の金』をはやして投機筋が一斉に買い戻しに走るだろう」(「週刊東洋経済」)
「日経ビジネス」の記事は、まるで「日経マネー」ではないかと見まがうような内容だが、都内では金貨や銀貨の自動販売機まで登場しており、しばらく話題になりそうだ。
(文=松井克明/CFP)