PayPay銀行では未成年者が、親の承諾を得ずに口座を開設できると話題になっている。親が子ども名義の口座を開設するのも手続きが面倒だと感じる方も多いだろうが、子どもが親の承諾を得ずに口座を開設するのも問題があるように思える。未成年者が自分の意思で銀行口座を開設することにリスクはないのだろうか。また、法的に問題はないのだろうか。
高校生になってアルバイトを始める場合、まずは給与を受け取るための銀行口座を開設することが必須となってくる。その際、未成年者は親と共に銀行窓口へ赴くか、親権者の委任状(承諾書)などを持っていくことが必要だと思う方が多いのではないだろうか。
7月末、SNS上でこんな投稿があった。
「PayPay銀行、15歳から口座開設できるらしいんだけど、保護者へのチェック何も無しに開設可能なのは狂ってるとしか思えないんだけど。子どもが勝手に口座開設して、口座を売買したら親が捕まる?ヤバくない?倫理観おかしいやろ。子どもが勝手に口座開設してさっきキャッシュカードが届いて発覚」
だが、実は今はそうではない。あまり知られていないが、15歳以上になると単独で口座を開設できる銀行が多い。親の承諾を要件としている銀行もある。銀行ごとに設定している、15歳以上の未成年者が口座開設する際の必要書類等を確認してみよう。
PayPay銀行は公式サイトで「15歳(未成年)でも口座開設できる」と掲げ、「自分の銀行口座を持ちたいと思っている人へ」とのタイトルで「満15歳以上で日本国内に住んでいるなら、自分名義の銀行口座を開設できるって知っていますか?」と問う。そこで、「親権者の同意は必要なし」「必ず本人が申し込みをする」「運転免許証がなくても大丈夫。マイナンバーカードなどで銀行口座が開設できる」の3つをポイントとして説明。
銀行ごとに異なる基準
三菱UFJ銀行は、「15歳以上」で「国内に居住かつ日本国籍」「三菱UFJ銀行の普通預金口座を持っていない」場合、本人が口座を開設できるとしている。店頭でもスマホアプリからでも開設でき、「運転免許証またはマイナンバーカード」があればよいという。
三井住友銀行の場合、15歳以上であれば親権者の同意なしに本人が開設できるほか、親権者が子ども名義で開設することも可能。未成年者が店頭で申し込む場合には、「印鑑」「マイナンバーカード」のほか「住民票」「健康保険証」等の身分証明書の提示が必要となっている。一方、親権者が子ども名義の口座を開設する場合、これらに加え、母子手帳など親子関係を証明できる書類も必要だという。ちなみに、ネット上で申し込む場合、身分証明書を必要事項を入力し、身分証明書を写真に撮って送信するだけなので、簡単に開設できる。
ほかにも、住信SBIネット銀行やソニー銀行、セブン銀行など、15歳以上であれば本人が開設できるとしている銀行は複数ある。むしろ、その場合、未成年であっても15歳以上であれば本人が手続きをしなければならない、としている銀行も少なくない。りそな銀行は年齢ではなく、「中学生以下は親権者」「それ以上は本人」としている。
反対に、15歳以上でも未成年者の口座開設に制限を設けている銀行もある。みずほ銀行やゆうちょ銀行は、18歳未満については親権者が開設することを求めている。
法律上、満15歳の3月31日を過ぎれば、バイトや就職することができる。その給与は一般的に、本人名義の銀行口座へ振り込まれる(手渡しを除く)。つまり、働き始めるには本人名義の口座は不可欠といえる。社会で働くことができるのであれば、自分の責任で口座開設ができても問題はなさそうである。
冒頭の投稿をされた方は、「子どもが勝手に口座開設して、口座を売買したら親が捕まる?」と懸念している。昨今、振り込め詐欺などの犯罪に、売買された口座が利用されているため、未成年者が気軽に口座をつくって売却するリスクを危惧するのは、ある意味で当然のように思える。
ちなみに、口座を売買・譲渡した場合、「1年以下の懲役・100万円以下の罰金またはその両方」が科される。さらに、当該口座は解約され、将来にわたって銀行取引ができなくなるおそれもある。また、仮に未成年者が口座売買などの犯罪行為を行った場合でも、親が罪に問われることはない。
今や気軽にスマホから銀行口座を開設したり、その口座を使ってネットショッピングを行うこともできるようになった。利便性が高まっているからこそ、使い方にはリテラシーが求められる。子どもが正しい社会生活を送るためには、以前より早くからスマホの使い方などを家族で話し合うなどの対策が必要になってきているのかもしれない。
(文=Business Journal編集部)