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碓井広義「ひとことでは言えない」(10 月15日)

ローカル局が熱い?活発化するテレビの挑戦 視聴率競争とは一線、地域と併走する意欲的試み

文=碓井広義/上智大学教授
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 さらにデジタル時代に逆行するかのようなアナログ的コミュニケーションから得たものを、今度はテレビにフィードバックさせていく。このテレビと映画の間を往還する取り組みの継続は、映像表現の場としてのテレビを捉え直し、再発見することにつながるはずだ。

<優秀賞>

●HTB詐欺撲滅キャンペーン「今そこにある詐欺」(北海道テレビ)

 視聴者に役立つ情報を提供することは、放送の大事な役割の一つである。年々増加する振り込め詐欺は高齢者が被害者となるケースも多い。北海道テレビは夕方の情報ワイド番組『イチオシ!』にコーナーを設け、1年以上も警鐘を鳴らし続けてきた。

 特筆したいのは、このキャンペーンを毎日放送してきたことだ。もちろん現在も、記者たちは日常活動と併行して素材を探し、1日も欠けることなく詐欺に関する情報を流している。表面に出ることを嫌いがちな被害者の証言を伝え、再現も含めて新たな手口を具体的に紹介する。「自分だけは大丈夫」と思っている人ほど危ないのが振り込め詐欺だ。

 たとえ時間・人数・予算が限られていようと、「今伝えるべきこと」を発信し続ける地域メディア。これは今後のローカル局のあり方に大きな影響を与える取り組みでもある。

●「未来へ伝える~私の3.11」手記募集(IBC岩手放送)

 時間の経過と共に、被災者の様子や復興の進捗状況が中央のメディアで報じられる機会は明らかに減少している。しかし、地元の放送局は住民との併走をずっと続けてきた。

 岩手放送が行っているのは、「あの日」の記憶を共有し、次の世代にも伝えていこうとする取り組みだ。ラジオを通じて手記を募集し、放送で読み上げ、CD付きの書籍として出版した。そこには被災者の“本音”と“事実”が記録されている。また環境と心の変化も見て取れる。

 それを可能にしているのは、マスメディアでありながら同時にパーソナルなメディアでもある、ラジオ独特の力だ。朗読を担当している大塚富夫アナウンサーの人柄とも相まって、ヒューマンな温もりのあるキャンペーンとなっている。

碓井広義/上智大学文学部新聞学科教授

碓井広義/上智大学文学部新聞学科教授

1955(昭和30)年、長野県生まれ。メディア文化評論家。2020(令和2)年3月まで上智大学文学部新聞学科教授(メディア文化論)。慶應義塾大学法学部政治学科卒。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。1981年、テレビマンユニオンに参加、以後20年間ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に『人間ドキュメント 夏目雅子物語』など。著書に『テレビの教科書』、『ドラマへの遺言』(倉本聰との共著)など、編著に『倉本聰の言葉――ドラマの中の名言』がある。

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