「遅刻をしてしまう人は、時間の読みが甘い傾向があります。出発から目的地に到着するまでに自分が使える全体の時間を把握する。それを意識すると、改善できるかもしれません。時間を忘れて作業に熱中してしまう場合は、時間を区切ってアラートをかけるのも有効ですよ」(同)
また、つまずいた原因を解消することで遅刻を防ぐこともできるという。
「目的地に向かっている最中や家を出るまでに“つまずいたこと”を振り返ることも大切です。振り返ったときに『歯ブラシと歯磨き粉がまったく別の場所にあって、見つかるまでに時間がかかった』などの原因にたどり着いたら、洗面台を整理整頓して歯ブラシと歯磨き粉を近くに置けば、探す時間を短縮できるはず。このような物の管理など自分の不得意な分野をあらためて洗い出すことで、遅刻原因のひとつが解消されます」(同)
そのほか、人間関係やコミュニケーションに悩みを抱えている人は「聞き役に徹してほしい」と司馬氏は話す。
「井戸端会議など数人が集まっている場所で会話の輪に入れないときは、聞き役に回りましょう。会話の内容を把握してから『そうなんだ』と相槌を打つと、自然な会話が成立します。また、思ったことをすぐに口に出してしまうADHDのある人や、場の空気が読めず失言をしてしまうASDのある人は、しゃべりだす前に『言いたい気持ち』を意識的にこらえてみてください」(同)
また、「もしかしたら自分は発達障害かも」という不安を抱えている人は、発達障害に関する本を読んで情報に触れてほしいとアドバイスをする。
「すべての人が専門医に診断してもらう必要はないと思います。近年は大人の発達障害に関する本も多く出版されているので、不安がある人はそれらを一度手に取ってみるだけでも、改善への第一歩になります。そうした情報の中から『自分に合った対処法』を見つけ出して実践することで、解消される悩みもあるはずですよ」(同)
“生きづらさ”の正体
社会生活でトラブルが発生しやすい発達障害を抱える大人たちは、同時に“生きづらさ”を感じているという。
「発達障害ではない人が“当たり前にできる”と感じている作業でも、発達障害のある人にとっては当たり前ではないことがたくさんあります。この“認識の差”が、発達障害のある人の生きづらさにつながっているようです」(同)