吉本・岡本社長、典型的な“怖い凡人”…「想像力の欠如・思考停止・自己保身」の3要因揃う
とくに日本の入試制度では、主に記憶力と情報処理能力(速さと正確さ)を見るので、丸暗記してしまえば、思考力がなくてもかなり偏差値の高い大学に入ることができる。だから、一見いい大学、いい会社のエリートコースを歩んでいるようでも、自分の頭で考えることができない人は少なくない。
この思考停止に拍車をかけるのが、“上の人”に無批判に服従する無批判的服従である。岡本社長も、上司や売れっ子芸人などの“上の人”の意向を「法」とみなし、それに徹底的に従うことによって、これまで身過ぎ世過ぎをしてきたのではないだろうか。
自己保身
こうした無批判的服従は、もちろん自己保身のためである。岡本社長の会見には、自己保身の願望がにじみ出ていた。だからこそ、言い訳めいた釈明をのらりくらりと繰り返したのだろう。
たとえ自己保身のためであっても、無批判的服従は日本のほとんどの組織で美徳とみなされる。しかも、服従する人間ほど“上の人”から気に入られ、甘い汁を吸える。逆に、服従せず、「それはおかしい」「そんなことはできません」などと声をあげる人間は、徹底的に干され、あげくの果てに排除される。これは見せしめのためでもある。
そのため、「長い物には巻かれよ」ということわざ通り、とりあえず服従しておこうとなりやすい。第一、そのほうが面倒くさくなくていいと思う人も少なくない。しかし、こういう姿勢こそ、“怖い凡人”を生み出すのであり、誰でも岡本社長のようになりうる。
“怖い凡人”は、日本社会のいたるところにいる。しかも、出世して組織のトップに上り詰めていることも少なくない。岡本社長が激しい批判にされているのは、もちろん彼自身の資質にもよるが、それだけでなく似たような上司の下で苦労している人が多いからではないだろうか。
(文=片田珠美/精神科医)
参考文献
片田珠美『怖い凡人』ワニブックスPLUS新書、2019年