欧州で大量余剰のインフルエンザワクチン、日本が大量購入で853億円分の税金を無駄
日本人は世界保健機関(WHO)に絶対的な信頼を寄せています。インフルエンザに関しては、全世界の予防の司令塔というイメージさえあります。
2009年4月、WHOが「メキシコで発生した新型インフルエンザが短期間のうちに米国にも広がり2500人が感染、死者が150人も出ている」という発表を行って注意を喚起した時も、日本は迅速に対応し空港で厳重な検疫体制を取りました。
同年6月にWHOは警戒レベルを最高段階である「フェーズ6」に引き上げました。これは、感染力が強く毒性も高いインフルエンザが世界規模で流行することを意味します。
WHOは妊婦、生後6~59カ月の乳幼児、高齢者などへの優先的なワクチン接種を推奨するとともに、大流行に備えて各国の政府に抗インフルエンザ薬「タミフル」の備蓄を勧告しました。
日本では、その前から連日、感染症の専門家たちがテレビに出て、スペイン風邪を引き合いに出して視聴者の恐怖心を煽っていたので、このフェーズ6への警戒レベル引き上げは国民の不安をさらに上昇させ、老いも若きもこぞってワクチン接種を希望するようになりました。
それにより、ワクチン不足の解消と限られた数のワクチンを誰に優先的に接種するかというテーマが国民的関心事になり、熱い議論が続きました。
欧米ではワクチンは不人気
しかし、同じ頃に欧州と米国では、日本とは逆の現象が起きていました。
ワクチンが十分あるにもかかわらず、欧州では接種希望者が数%から十数%しかいなかったのです。ワクチンはWHOの勧告で最優先接種とされた妊婦には特に不人気で、英国では妊婦の5%しか接種しませんでした。インフルエンザに罹るよりも、そのワクチンによる副作用のほうがずっと怖いと考える人たちが多かったからでしょう。
医療の現場で日ごろ患者に接する看護師の間でもワクチンは不人気で、接種を拒否するケースが続出しました。インフルエンザを、特別な予防を必要としない風邪の一種だと思っている人が多かったからです。欧州ほどではありませんが、米国でもワクチンは不人気で、成人の5割以上が接種を希望しませんでした。
結局、欧州では大量にワクチンが余ったので、製薬会社に注文のキャンセルが続出。メーカーは大量の在庫を抱えることになり、一部が発展途上国への無償援助に回されたほかは、本気で欲しがっていた日本に定価で販売されることになりました。それにより日本の貴重な税金が1126億円も欧州の余り物となってしまったインフルエンザワクチンの購入に費やされることになったのです。
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