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カリフォルニア編

ガイドブックに載らない「アメリカ旅行」の超穴場“極上”スポットを一挙紹介

文=松崎隆司/経済ジャーナリスト

隠れたリゾートは富裕層の住宅街「ティブロン」

 日本人にとって最も人気の高い海外旅行先、米国。なかでもカリフォルニアにはディズニーランドやユニバーサルスタジオ、ビバリーヒルズなど人気スポットが目白押しだ。海外旅行の初心者が行くところだと思われがちだが、カリフォルニアには日本人がほとんど行ったことのないような場所がたくさんある。筆者は最近、旅行作家協会に所属し、日本旅行記者としてのキャリアもスタートした。そこで、カリフォルニア観光局主催のプレスツアーに参加してみることにした。

 旅行業界のプレスツアーは、だいたい関係者もあわせて6人ぐらいのツアーになる。カリフォルニア観光局メディア担当の森川由佳氏は、今回のプレスツアーの狙いについて次のように語る。

「日本からカリフォルニアへの直行便はロサンゼルス、サンフランシスコ、サンノゼ、サンディエコの4都市に飛んでいますが、今回はサンフランシスコとサンノゼのゲートウェイから周遊するロードトリップをご紹介します。カリフォルニアの観光というと、ロサンゼルスやサンフランシスコなどの大都市をイメージされる方が多いと思いますが、カリフォルニアは日本全土の約1.1倍の広さがあり、まだあまり知られていない人気スポットがたくさんあります。カリフォルニアの都市と自然がいかに隣接しているのかを実感し、海や山、森林、ハイテクノロジー、グルメ、ワイン、ショッピングを満喫していただければと思って企画しました」

 筆者は脊柱管狭窄症で、都内では10分も歩けば、腰痛で動けなくなってしまう。山や森を散策することは苦痛以外の何物でもなかった。とはいえ、経済記者としてシリコンバレーをしっかりと見据えておきたい――そんな思いで参加したツアーだったが……。

サウサリートを超えティブロンへ

 成田発サンノゼ行き全日空(ANA)のNH172便に搭乗したのは、11月3日17時。当然重装備、湿布にコルセット、加圧タイツなどを着用し、長時間のフライトに備えた。成田―サンノゼ便は2013年、日本の航空会社としては初めてANAが直行便を運航、人気の航路だ。機内のトイレすべてにウォシュレットが配備され、日本人にはうれしい作りになっている。海外の航空会社にはないサービスで、心配をよその快適なフライトだった。

 サンノゼ空港に着いたのは日付変更線をまたいだために同日午前9時15分。空港では1台のマイクロバスが待機しており、これに乗り込んで向かったのがサウサリート。

 カリフォルニアの北部、太平洋寄りにあるサンフランシスコ湾。この南部に位置するのがサンノゼで、ここから一気にシリコンバレーやサンフランシスコを抜けて北上し、ゴールデンゲートブリッジを渡ったところにあるのがサウサリートだ。

 米国では人気の高級リゾート地で、周囲には芸術家や音楽家が多く住んでいるという。ヨットハーバーにはカラフルなヨットが並び、海に面した通りにはカフェ、ギャラリー、アンティークショップが立ち並んでいた。

 サウサリートについたのは12時30分ごろ。ここで昼食を済ませると、さらに20分ほど北上し、ティブロン(スペイン語でサメの意味)に。ティブロンは米国人富裕層の隠れ家的リゾート。米・フォーブス誌で「米国のもっとも高価な不動産市場トップ20」の18位にランクされたこともあるカリフォルニア屈指の高級住宅地としても知られている。

 ティブロンの観光ツアーでもっともポピュラーなのが、エンジェルアイランド州立公園を周遊する遊覧ツアー。主催するエンジェルアイランド・フェリーのオーナー、マギー・マックドノグさんが案内してくれた。マックドノグさんは米国版の肝っ玉母さん。祖父から孫まで親子4代にわたってこの仕事を続けてきた。

「私は船長だってやってきたんだよ。この船の操作なんてお手の物だよ」と胸を張る。「見てごらん。あの目の前にあるのが、エンジェルアイランド。ここには米軍基地や検疫局、入管などがあったんだ」

 フェリーはエンジェルアイランドを過ぎると、今度は脱走映画の舞台にもなった「アルカトラズ島」を横目に夕日に映えるゴールデンゲートブリッジの下をくぐってティブロンへ帰港。一行はその足でディナーへと向かった。

 ティブロンではほとんどのレストランがフェリー乗り場近くにあり、LDL(悪玉)コレステロールの原因となるトランス脂肪酸を2004年、すべてのレストランから排除したことでも有名。一行はディナーをとるために、ティブロンでも最も古いアメリカン・レストランの一つ、サムズアンカーカフェ(1920年創業)に向かった。ここはサンフランシスコ湾では唯一、遊覧船用のドック(40トン未満)があり、天気がよければハーバーフロントデッキにはランチを楽しむ客が殺到するそうだ。名物の生ガキをはじめ新鮮なシーフードに舌鼓をうって、宿泊先のロッジ・アット・ティブロンへ。

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 2日目は午前8時15分にホテルを発ち、午前中は自然散策、午後はワイナリー訪問。ティブロンを西進し、ミルバレーにあるミュアウッズ国定公園に到着したのが午前9時。ここには世界一背が高いレッドウッドの森がある。最古のものは樹齢2000年を超え、115.5mの高さにもなるという。マリン観光局のセールス&マーケティング部長のクリスティーン・ベールケさんは語る。

「1906年にサンフランシスコで大地震があり、火災となった。その復旧のために木を切って家をつくったのだが、そのときレッドウッドが大量に伐採された。そのようななかでこの場所を守らなければならないと、自然保護に力を入れていた地元のケント議員が森を買い、政府に寄付して1908年に国定公園となった。名前の由来はケント議員があこがれていた自然保護運動家のジョン・ミュアに由来しています」

 散策コースは川に沿って舗装されたトレイルが1マイル(1.6㎞)にわたって続き、往復で1時間30分くらいの散策コースとなっている。腰痛持ちの筆者にはかなりきついと思っていたが、実際に歩いてみると、トレイル(自然歩道)がきちんと整備され、思ったほど負担感なく、散策を楽しむことができた。

 1時間30分ほどの散策を終え、次に向かったのがポイントレイズ国定海岸。ミュアウッズ国定公園から北に1時間ほどいったところにある。マリンカウンティ・ポイントレイス半島に位置する287平方キロメートルの広大な岬。1500種以上の動植物と130キロの海岸線がある自然のサンクチュアリ(聖地)で、海岸線を見るだけでも別世界に来たような気分にさせてくれる。

知られざるカリフォルニアワインの名所「ローダイ」

 ツアー一行は、カリフォルニアワインのルーツを求めてローダイへ。アメリカは、イタリア、フランス、スペインに次ぐ世界第4位のワインの産地となっているが、そのルーツは1769年、スペインの宣教師、フニペロ・セラがサンディエコでミサの祭壇で使うワインをつくるために、ぶどうを植えたのが始まりだという。その後19世紀にはいると、ソノマやナパなど北カリフォルニアに広がり、この一帯がワインカントリーと呼ばれる一大観光地に発展した。

 実はこのワインカントリーをはるかにしのぐ生産量を上げているのがローダイだ。1857年にアルジェリアから導入した「フレイム・トーケイ」種ぶどうがきっかけで、今では100種以上のぶどうが栽培されている。750を超えるぶどう農家と約85のワイナリーがあり、日本のワインの産地として知られる山梨県甲府市とは友好都市となっている。

「この土地で採れたぶどうを85%以上使わないとローダイワインと呼ぶことができないんですよ」

 ローダイ観光局CEOのナンシー・ベックマンさんはいう。ローダイにはマイケル・デイヴィッド・ワイナリーやルーカスワイナリー、ボーキッシュヴィンヤーズなどテイスティングを楽しめるワイナリーが70カ所。ローダイワインのうんちくを聞いたらやはりその味を楽しみたい。そこで向かったのがローダイを代表するアメリカン・レストラン「タウンハウス・レストラン・ワイン&ローズ」。

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 ローダイワインカントリーの中心部、タウンハウスにあるこのレストランはロディアペラシオンをはじめ80以上のワインを楽しむことができる。タウンハウスはミネソタ州出身のバートン・A・タウンとその妻、アリス・マリンストックが建てた家とその農場がルーツ。彼らの家では親子3代にわたってガーデンパーティーなどが開かれ、地元の著名なメンバーが集まり農業改革や公共サービスなどが議論されたことから、おもてなしと優雅な生活の象徴として1984年にはタウンハウスはサンホアキン・カウンティの史跡に指定されている。優雅な雰囲気で古き良きアメリカを楽しむにはうってつけの場所、ジャズピアノの生演奏なども行われている。

 ローダイワインや食事を堪能し、その日はインターコンチネンタルホテルズグループが展開しているキャンドルウッドスイーツに宿泊した。

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 ローダイのワインと共に今注目を集めているのがオリーブオイル。3日目はローダイのオリーブ園、「カリバージン・オリーブオイル」に。家族経営の農園だが、機械で収穫するから大量生産ができる。まさに米国の農業といった感じ。しかしオリーブオイルの品質や味にはこだわりがあるという。共同経営者のジュリー・コールダニさんは語る。

「75年前から親子4代にわたってやってきました。私たちの家族と営業チームの大半はカリフォルニア州立工科大学、サンルイス・オビスポ校卒業生です。ワインの名産地ローダイの肥沃な土地を使ってオリーブを育てるというCalPolyシニアプロジェクトのアイデアを活用して、最先端の技術を駆使し栽培しています。オリーブオイルは青いものと紫色に変色するものがあるのですが、紫色のものを入れるとえぐみがでるから、うちは早摘みにしています。また純品だけでなく、ニンニクやグレープフルーツ、レモンなどさまざまな香りをブレンドし、商品化しています。商品の品質には自信があります。すでに多くの賞を受賞しています」

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復興中の町ストックトン

 一行はローダイからさらに南下、ストックトンという町に向かった。ストックトンはカリフォルニアではフレズノ、サクラメント、ベーカーズフィールドに次ぎ州内で4番目に大きな内陸都市。

 一時の町の衰退で耕作放棄地が増加、それに対して市民は街を活性化させようといろいろ議論を重ね、そうしたなかで生まれてきたお店が自然食品など体に優しい商品を扱っている「インシーズン・マーケット・アンド・ナーサリー」だった。

「ここも昔は農地だったんだけど、廃れていて。そんな土地をもっと有効に活用できないか、いろいろ考えているうちにこの仕事を始めるようになったんだ」

 こう語るのはショップのオーナー。エリック・フィルポさんは元新聞記者。ジュリー・モアハウスさんが園芸などをやってきたことからいろいろ勉強し、自分でも始めるようになったという。

「うちは農薬を使わず、自然の力で食べ物を育てています。石鹸なんかは日本の有名なナチュラリストとコラボ企画しています」

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 ここからさらにバスは南に。4日目には再び自然を求めた旅になる。それがモントレー・カウンティにあるピナクルズ国立公園。2013年にオバマ大統領に認定された一番新しい国立公園。だから日本でもほとんど知られていない。

 2300年前の火山層で、サン・アンドレアス断層周辺で発生した地震により噴火した火山岩が、321km南東にあるサリナスバレーの現在地まで運ばれてきたという。

「断層は1年に1cmずつせり上がり、東に動いているのです。個々の火山活動は今はありません。運が良ければコンドルを見ることもできます」(ナショナルパークの案内係)

 雄大なピナクルズ国立公園でハイキングを満喫した後にツアー一行はシリコンバレーの一角、ミルピタスに移動した。 シリコンバレーといえば、ITベンチャーの聖地、アップルコンピュータやグーグル、フェイスブックなどの本社がある。しかしそれだけではない。さまざまな観光施設もある。

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ITベンチャー企業を育て続けるシリコンバレー

 ショッピングといえばロサンゼルスをイメージするが、ミルピタスは北カリフォルニア最大の屋内型アウトレットモールがある。「グレートモール」だ。映画館も併設され、3年ほど前からリニューアルが行われ、「マイケルコース」「ケイト・スペード」「コーチ」なども出店している。サンノゼからバス一本でいくことができる。

「グレートモール」を見学すると次に一行はサンノゼに。ここには国際空港があり、シリコンバレーのゲートウェイのような存在。ここには家族で最先端技術を楽しむことができる「テック・イノベーション博物館」、マウンテンビユーにあるシリコンバレーのコンピュータの歴史を学ぶ「コンピュータ歴史博物館」などがある。

「コンピュータ歴史博物館」のギャラリーインタープリターの山崎敦史さんはシリコンバレーがITベンチャーを育て続ける理由を次のように語る。

「ITベンチャーを成功させてきたのは若い経営者たちです。そんな経営者をシリコンバレーが育ててこられたのは、実学を重視してきたスタンフォード大学やコンピュータのマニアたちがつくるホンブル・コンピュータクラブなどの力が大きかったのではないでしょうか。そして成功した経営者たちは若い人たちを育てるために尽力する、そんな文化もシリコンバレーがベンチャーの聖地になった大きな理由ではないでしょうか」

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 シリコンバレーの富裕層は日本との交流も深い。いまや米国では日本食ブームだが、シリコンバレーは一味違う。

「シリコンバレーの経営者は頻繁に日本に行っています。日本の本当においしいものをよく知っている。和牛といってもそれだけではだめ。どこの産地のものかといったところまで求めてくる」

 そんなニーズに応えたのが今やシリコンバレーの富裕層に人気の「アレキサンダー・ステーキ・ハウス」。ここは米国牛だけではなく和牛にも力を入れ、特産地別の和牛もある。和牛を食べなれた富裕層でも楽しめるコンセプトになっている。また系列店「ONE65」がサンフランシスコにも誕生、6階建てのビルにはカフェかららカジュアルなビストロ、バー、フォーマルスタイルのダイニングなど用途別の店があり、人気を博している。

 一行はこの日、ハイアットプレイス・サンノゼに宿泊し、最終日はグーグル本社やアップルパーク、フェイスブックなどの本社やスタンフォード大学などを見学、サンフランシスコに移動し、10月7日に新設されたグランドハイアット・アット・SFOを見学した。

 サンフランシスコ国際空港唯一の空港ホテルで、ビジネスには非常に使い勝手がいい仕組みになっている。ヨガなどウエルネス、会員制のラウンジ、日本食をはじめとした各国の料理取り入れたレストランにも力を入れているという。最終日はオムニ・サンフランシスコに宿泊し5日間のプレスツアーは終了、サンフランシスコから日本に戻ったが、果たして読者はどんなツアーを楽しむのか、参考になればいいのだが。

松崎隆司/経済ジャーナリスト

松崎隆司/経済ジャーナリスト

1962年生まれ。中央大学法学部を卒業。経済出版社を退社後、パブリックリレーションのコンサルティング会社を経て、2000年1月、経済ジャーナリストとして独立。企業経営やM&A、雇用問題、事業継承、ビジネスモデルの研究、経済事件などを取材。エコノミスト、プレジデントなどの経済誌や総合雑誌、サンケイビジネスアイ、日刊ゲンダイなどで執筆している。主な著書には「ロッテを創った男 重光武雄論」(ダイヤモンド社)、「堤清二と昭和の大物」(光文社)、「東芝崩壊19万人の巨艦企業を沈めた真犯人」(宝島社)など多数。日本ペンクラブ会員。

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