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過敏性腸症候群、機能性ディスペプシア…消化器の専門医が指摘する「日本人を襲う新たな病気」

新刊JP編集部
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 日本人の死因トップである「がん」。

 厚生労働省が発表している『平成27年 人口動態統計』によれば、がんの死亡者数は37万人にのぼります。この年の日本の死亡者数はおよそ130万人ですから、国民の2.8人に1人は、がんが原因で命を落としているということになります。

 『消化管(おなか)は泣いています 腸内フローラが、体を変える、脳を活かす』(内藤裕二著、ダイヤモンド社刊)によると、近年は特に、食道、胃、小腸、大腸などを含む消化管系のがんが増加しているといいます。消化管(おなか)の健康を考えることは、そのまま「がん対策」につながると言っても過言ではないのです。

 また注目すべきは、近年日本人の「腸内環境」が、欧米化した食生活や不規則な生活習慣によって悪化の一途をたどっているということです。それにともない、新たな病気が発見されています。

日本人を襲う新たな病気

 近年、新たに発見された消化管系の病気とは、どのようなものなのでしょうか。ここでは一例として、「過敏性腸症候群」についてご紹介しましょう。

 通勤電車のなかで急にお腹が痛くなってトイレに駆け込む、会議の前には決まって下痢や便秘などお腹の調子が乱れる――。こうした症状が見られる場合、過敏性腸症候群を疑っていいかもしれません。この病気の原因は主にストレスといわれています。現代日本では、患者数が約1,200万人にのぼるとの推計があり、とても身近な病気なのです。

 また、もう一つの新しい病気として、「機能性ディスペプシア」が挙げられます。この病気は、内視鏡検査では潰瘍やがんが見つからないにもかかわらず、胃もたれや上腹部の痛みといった症状が続くのが特徴です。5~10%の方が機能性ディスペプシアと診断できると言われていますが、内視鏡検査では異常が見つからないこともあって市販の薬品を用いて自己流の対処をするなど、病院で適切な治療を受けていない方も多いことが大きな問題となっています。

腸内フローラって何?

 ここまで紹介してきた病気はまだ解明が十分に進んでおらず、有効な治療法は残念ながら確立されていません。しかし、これらの病気に罹る可能性を低くすることなら可能です。その方法こそが、著者である内藤医師が指摘する、「腸内フローラの乱れを解消すること」なのです。

 しかし、そもそも腸内フローラとは何なのでしょうか。人間の腸内には約1,000種類、100兆個の細菌が住みついており、それらが群れをなして生息する様子は、まるで花畑のようにも見えます。腸内細菌が集まったこの様相を叢(くさむら)になぞらえ、腸内フローラと呼んでいるのです。

 腸内フローラは、3種類の腸内細菌――有用菌(乳酸菌、ビフィズス菌など、免疫力を高めたり、消化・吸収を助けるもの)、有害菌(大腸菌などを始めとして、腸内の腐敗を進行させたり、発がん性物質を作り出すとされているもの)、日和見菌(腸内細菌の7割を占めるが、種類や機能はよく分かっていないもの) から形成されています。

 本書では、腸内に生息する細菌が多様性をもっていることが健康のために大切であると述べられています。つまり、「腸内フローラの乱れ」とは、腸内細菌の種類や量が減り、多様性が失われることなのです。こうした状態を解消することが消化管(おなか)、ひいては全身の健康へとつながるのです。

腸内環境を良くするには、食物繊維と発酵食品を!

 では、腸内フローラの乱れを解消するためには何に気をつければよいのでしょうか。内藤医師によれば、それは食生活の見直しです。

 具体的には、食物繊維を多く含む野菜、芋類、キノコ類、海藻類などを積極的に摂取することが挙げられます。食物繊維は、有害菌の増殖を抑えてくれるばかりでなく、有用菌のエサとしての機能ももっており、腸内環境改善のための強い味方となります。

 また、納豆、酢、みそ、しょうゆ、漬物といった発酵食品も、腸内フローラを有用菌に変化させる効果も期待できます。これらは日々意識的に摂取することによって腸内環境改善につながっていくようです。

 ここで紹介した健康面に加え、本書ではキレやすい子どもや自閉症の子どもに関して、腸内環境が与える影響についての報告例も紹介されており、消化管が果たす役割の大きさを実感します。

 消化器内科として内藤医師が、多数の最新の研究データを用いながら解説を行なう本書は、日本人の健康を考える上で、多くのヒントを示してくれる一冊と言えるでしょう。
(新刊JP編集部)

※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。

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