フライドポテトや加熱した肉、強い発がん性発覚…ワラビや近海の魚介類も危険か
「トランス脂肪酸」という言葉が話題になっています。これを含む食品の製造・販売が、近々全面禁止になるという米国発のニュースもありました。しかし、私たちが普段から口にしている食品の中には、もっと危ないものがいろいろありますので、まとめてみました。
過去50年間、日本人の大腸がんが増え、女性で2倍、男性では5倍にもなっています。その昔、大腸がんは肉をたくさん食べる欧米人に多く、日本人にはまれな病気でした。大腸がんの増加に一致するように、日本人の食肉消費量が大幅に増えてきたことから、両者にはなんらかの因果関係があるのではないかと考えられてきました。しかし、研究者たちがいくら精肉の成分を調べても、発がん性のある物質は見つかりませんでした。
ところが最近、牛肉を高温で長時間調理すると、その成分が化学変化を起こし発がん物質に変化するという驚きの事実が判明しました。肉は焦げるほど焼かないこと、焼き肉やバーベキューを食べるのはほどほどにすることです。食中毒の原因菌は肉の表面に付着していますので、牛肉ならミディアムくらいの焼き方で十分でしょう。ただしハンバーグは、中心部までしっかり加熱しないと食中毒を起こす可能性があります。
加熱する際に気をつけなければならない食材がもうひとつあります。ジャガイモです。高温で長時間調理すると、成分の一部が「アクリルアミド」という発がん物質に変化するのです。フライドポテト、ポテトチップス、シリアル、ビスケット、クラッカーなどに多く含まれていて、世界中の調査結果をまとめた論文によれば、フライドポテト100グラムを毎日食べ続けると、商品によっては許容範囲を超えてしまいます。
焼く、揚げる、炒める、煮る、蒸すなどの調理法がありますが、焼いた場合の温度は200~300度、揚げた場合でも150~220度になります。食材にかかわらず、安心なのは「煮る」と「蒸す」です。水を使っている限り、100度以上にはならないからです。
天ぷら油の使い回しも問題です。油は、空気、光、金属イオンなどに長時間さらされると、過酸化反応を起こし、体内に入ったときに発がん性を発揮する可能性があります。この反応は高温になるほど促進されます。
天ぷら油は3、4回使ったら、または開封後2~4週間たったら廃棄しましょう。油の継ぎ足しは絶対にしないことです。なお業務用器具は、酸化防止や浄化の機能がついていて、油を繰り返し使えるようなっています。
ダイオキシン
海産物や農産物は、法律に基づく定期的な検査が行われているため基本的に安心ですが、近海で獲れる魚貝類や海藻などに、まれにダイオキシン類などの発がん物質が高濃度に含まれていることがあります。過去には、日本産のヒジキにヒ素が含まれているとして、英国政府が輸入を禁止したこともありました。
ダイオキシン類は、人間の生活環境中にある代表的な発がん物質で、主に物を燃やしたときに発生します。この物質だけが危険だというわけではありませんが、どこにでも存在することから、環境汚染や海産物汚染を測る指標として使われています。
山菜のひとつ、ワラビにも発がん物質が含まれています。その昔、野山に生息しているワラビを食べた牧畜に、膀胱がんが多発したという話もありました。忘れてならないのはワラビの「あく抜き」です。昔からいろいろな方法が言い伝えられていますが、発がん物質を取り除くための処理ですから、必ず実行することです。
トランス脂肪酸とは?
さて話題のトランス脂肪酸とは、いったいなんでしょうか。植物性油脂を粉末や固形の製品に加工したりする際に生ずる物質です。欧米では以前から関心が高く、トランス脂肪酸を多く摂っている人ほど心筋梗塞になりやすいことが数々の調査で証明されています。幸い、通常の摂取量でがんになることはありません。
この物質は、ショートニング、マーガリン、コーヒーフレッシュ、クッキー、クロワッサンなどに多く含まれていますが、もともと日本人は脂肪の摂取量が少ないため、健康へのリスクはほぼないと考えてよいでしょう。
がんの予防は食生活の見直しからです。発がん物質に関する正確な情報が、米国政府機関が発行する「13th Report on Carcinogens」に掲載されており参考になります。
(文=岡田正彦/新潟大学名誉教授)
参考文献:Nutr Cancer 2014;66:774-90