芸能活動休業中のベッキーをはじめ、記者会見で「人間としての欲が勝ってしまった」と釈明して失笑を買った宮崎謙介元衆議院議員など、不倫で人生を台無しにする人は多い。
判断力を狂わせてしまう「性欲」は実に厄介なもので、「自分は性欲に負けることはない」と言い切ることのできる人は少ないだろう。いったい、人間は何歳まで、この性欲に振り回され続けるのだろうか。
「性欲」と「精力」はまったく別物
「男性の場合、個人差はありますが『何歳になったら性欲がなくなる』といった基準はありません。身体的なピークは10~20代ですが、60~70代になったからといって、性欲が衰えるわけではないのです」
こう語るのは、美容外科医でセックスに関する著書を多数上梓している山下真理子氏だ。
「注意しなければならないのは、そもそも『性欲』と『精力』は違うということです。生殖器の能力はなくなっても、『女性と触れ合いたい』という執着がある場合、それは『性欲』といえます」(山下氏)
『失楽園』(講談社)や『愛の流刑地』(幻冬舎)などのベストセラー小説を生み出し、数多くの女性遍歴でも知られた作家の故・渡辺淳一は、晩年は性的不能を告白していたものの、80歳で亡くなるまで性的な行為自体は重ねていたという。
また、「最高齢AV男優」として世界的に有名な徳田重男氏は、81歳の今も現役のAV男優として活躍する半面、作品内では必ずしも「本番行為」を求められるわけではないようだ。
ちなみに、筆者は個人的に「朝勃ちしているうちは、まだ現役」という漠然としたイメージを抱いていたのだが、この「朝勃ち」も性欲ではなく精力に関するものだという。
「朝勃ちと性欲の有無は、あまり関係ないのです。もちろん、朝勃ちするということは、それだけ神経伝達や血流の状態がいいので、勃起力のひとつの目安にはなると思います。しかし、朝勃ちをしないからといって、性欲がないとは限りません」(同)
50代で性に目覚め“開発”される女性も
では、女性の性欲についてはどうだろうか。実は、男性の性欲と女性の性欲には、決定的な違いがあるという。
「男性の性欲は、食欲や睡眠欲と同じ『一次的欲求』であり、先天的に備わっているものです。一方、女性の性欲は『二次的欲求』であり、生きる中で獲得される後天的なものです。もちろん、男女ともに両方の側面がありますが、女性の場合は二次的欲求の側面が特に強いということです」(同)
例えば、男性は思春期になると性体験がなくても「精通」を経験するが、女性の場合は性体験なしで突然「濡れてきた」ということは起きづらいという。
「逆にいえば、女性は性体験に伴って身体的に開発されるほど、性欲が増していきます。一般的に、女性の性欲は、ある程度の性体験や身体的な成熟から、20~30代がピークといわれます。しかし、子育てや仕事が一段落する40代にピークが訪れるという人もいます」(同)
中には「あまり性欲がない」「セックスに興味がない」という女性も存在するが、これはなぜなのだろうか。
「確かに、そういう女性もいます。性経験から快感を得ていない女性は、性欲自体が減退しやすいのです。そのため、『遺伝子を残す』という根源的な意味での性欲しか残らず、『それ以外のセックスは必要ない』という人が出てくるのです。ちなみに、閉経と性欲も関係はありません。閉経後も性欲が旺盛な女性はいますし、それは何もおかしいことではありません」(同)
男女問わず、人間の年齢と性欲の有無はあまり関係がなさそうだ。
「実際、性生活について相談に来る方の中には、『50代で性的に開発された』『50代になってから新たなパートナーを見つけ、50代同士で性に目覚めた』という方も少なくありません。そういう話を聞くたびに、人間の性欲というのは何歳からでもスタートするんだな、と思います」(同)
パートナーと満足のいく性生活を送っている人は、年齢に関係なく、いつまでも旺盛な性欲を保てる可能性が高いようだ。そして、男性の場合は加齢により勃起が困難になっても、オーラルセックスなら可能である。幸か不幸か、「セックスしたい」という気持ちがなくならない限り、性欲に終わりはないのかもしれない。
(文=青柳直弥/清談社)